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雨が降っていた。
激しい土砂降りだった。
予報にはなかった突然の雨。
けれど、少女に関係は無く、今日も今日とて、本の世界に居る。
カラン、カラン、と、音がして、少女は顔を上げる。
「いらっしゃい」
本を置いて立ち上がると、そこにはこの店の名付け親が立っていた。
「やあ、ずぶ濡れじゃないか」
カウンター下から大きめのタオルをもって駆け寄る。
「私の店が、近くにあってよかったな」
くすくすと笑いながら、少女は青年にタオルを差し出す。
「用意していたのか?」
「ああ、念のためね。君は、ここを駆け込み寺のように思ってる節があるから。まあ、君が来なくても、他の客が来た時に渡そうと思って。びしょ濡れのまま歩き回られたら困るから」
髪を拭きながら、青年が店内を見る。
「確かに、濡れたら困るだろう」
「ああ。大好きな本を汚されたら困るからね」
「そうだな」
頷きながら青年はタオルを少女に返す。
「シャワーもどうだい?」
「……どうせ風呂も沸かしてあるというんだろう?」
「正解だ」
にぃ、と少女が楽しそうに笑う。
青年が脱いだ上着を半ば奪うように持ち、少女は店の奥へと駆けていく。
「さあ、風邪をひかないうちに」
そう云った少女の後ろ姿を見送って、青年は口元を手で覆った。
そうして目を泳がせる。
気づかれていないだろうか?
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年11月30日 15時