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呆然と、乱歩がつぶやいた。
「ど、どういうことです!?」
「どうもこうもない。異能が使えないんだ」
乱歩の、苛立たし気な説明に、敦がより慌てる。
「じゃ、じゃあこの事件は……」
「すまんが……」
再び、先ほどの女性が手を挙げていた。
「異能と聞こえたんだが、使えないのであれば私のせいかもしれん」
「どういうこと?」
乱歩が訝し気に女性を見る。
「私も異能力者だということさ。私がここにいるのが問題なだけだから、私がここから移動すれば名探偵は異能力をいつも通り使えるはずさ。そうだな、そこのアシメの虎少年。私も容疑者の1人だろう?少しばかり見張りとして着いてきてはくれないか?」
そう云って女性は立ち上がる。
「私がこのまま逃げ出してしまう可能性を考えているのなら、手錠をかけてくれてもいい」
そう云って両手を合わせて差し出した。
『どうします?』と、敦が乱歩に目で訴える。
怪しいことこの上ないが、虎の異能を持つ敦であれば逃走時の確保は容易だ。
「敦、行ってこい」
「わかりました」
乱歩に言われ、敦は女性に駆け寄った。
警官に手錠を掛けられた女性は、抵抗する気配も、逃げ出す気配も見せず、敦に連れられデパートの奥へ移動する。
「貴方も、無効化の能力を持っているんですか?」
乱歩の姿が見えなくなったころ、敦が聞く。
「少し違うな」
答えながら女性は、足を止めた敦を置いてさらに奥へ進む。
「このくらいでいいだろう」
『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた扉の前で、女性は足を止めた。
「事件は、名探偵の彼が解決してくれるから大丈夫だが、私が怪しいことに弁解の余地はない。いくらでも、質問をしてくれて構わないよ」
一瞬、事件の容疑者だということを忘れそうになった。
だがすぐに、敦が切り出す。
「じゃあ、まず、貴方は本当に異能力者なんですか?」
「ああ。そうだ」
女性はあっさりと頷いた。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年11月30日 15時