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「さて、名探偵。今日はどうしたんだい?お菓子の注文であれば、あいにくと今日は材料切れがいろいろあってね、ご容赦願うよ」
「……お腹空いたから。福沢さん、今日は会食らしいし」
「おや、夕食を食べに来たのかい?珍しい。いいよ、御馳走しようじゃないか。前にも言ったが、料理も得意なんだ。リクエストを聞くよ。ああでも、誰かと夕食を食べるなんてことはそうそうないからね、味付けは私好みになってしまっていることはご理解いただきたいね。太宰くんも食べていくかい?」
にこにこと楽しそうに太宰に問いかけるが、答えたのは乱歩だった。
「太宰は探偵社に帰れ。国木田くんが探してたから」
返答に、きょとんとするふくろうと太宰。
太宰は肩をすくめ、カップに残った紅茶を飲み干して立ち上がる。
「乱歩さんが言うなら、そうした方がいいのでしょうね。紅茶、御馳走様。また来たくなったら連絡するよ」
「ああ、ここにたどり着けるように願っておくよ」
ほほ笑んで、太宰に手を振るふくろう。
太宰は店を出る間際、乱歩の方を見てニヤァと笑った。
「……」
「どうしたんだい?名探偵」
「何でもない。甘いゆーりんちーが食べたい」
「なかなか手間のかかるものを要求したね。いいよ、私も油ものを食べたい気分だ。材料もあったはず。そうだ、たまには一緒に作ろうじゃないか」
「げ……」
「ふふふ。料理もまた実験、やってみると、意外と楽しいかもしれないよ」
ティーポットとティーカップ、そしてあっという間に空っぽになった皿をトレイに乗せ、立ち上がる。
「名探偵、前の札を『Close』にしてきてもらえるかい?」
「えー……」
嫌そうな顔を擦る乱歩に、ふくろうはニヤリとした笑みを向ける。
「私は辛いのも好きでねぇ……」
「……わかったよ」
乱歩はしぶしぶ立ち上がり、店のドアへと向かった。
その後ろ姿を見ながら、ふくろうはわずかに笑みを漏らした。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年11月30日 15時