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「子供扱いは辞めて欲しいね。あれからもう4年以上もたっているんだから。私も、とっくに成人しているのだよ」
「そうだね。でも、君に対する私の印象は、必死になって私を口説こうと頑張っていた少年の続きだ。これから何回でも会いに来て、その成長具合を見せてくれたまえ」
「……君には、敵いそうにないよ」
そう云って、太宰がふくろうの手を握る。
「ふふふ。いつか勝って見せたまえ」
かつて見た幼さの消えた大人びた表情に、ふくろうは笑みを深める。
そのとき、カランカラン、と、来客を告げる音が聞こえた。
入ってきたのは乱歩だった。
「どうも」
「……ん」
「おや、名探偵。いらっしゃい」
三者三様の反応を示す。
太宰は軽く頭を下げ、乱歩はそれにそっけなく反応する。
ふくろうは、太宰の手をやんわりと解くと、レジカウンター奥から手招きをする。
「今朝焼いたばかりのフロランタンが、ここにあるよ。いかがかな?」
「食べる」
乱歩の即答に、ふくろうは『ふふふ』と笑みを漏らした。
乱歩は、真っすぐレジカウンターの前まで歩いてくると、当然のようにカウンターの内側に入り、ふくろうの正面に座った。
「乱歩さんは、そっちに入るんですね」
「誰よりも利用頻度が多くて、依頼数も多いからね」
「ああ、製菓の」
「そう。作っている間とかに、店番を頼むようになってね。そうでなくても、話す回数も多いから、いっそのことと思って、名探偵の椅子はこっち側に用意するようになったのさ」
「あんまり入り浸ってると、社長に怒られますよ」
「サボり魔の太宰には云われたくない」
「云われてしまったねぇ、太宰」
ふくろうは、楽しそうに笑う。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年11月30日 15時