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「ああ、私も初めて見たよ。写真を撮っておけばよかったと思っている」
「そうだね。それで、あまりにもしつこくて、うんざりしてしまって。異能力がどうのこうのなんて忘れて、私は声に出して云ったんだよ、」
「「『君のように軽薄な男とは、なるべく関わり合いにはなりたくないなぁ』」」
「って、愛想笑いを浮かべてね」
「ああ」
くつくつと、互いに肩を震わせて笑った。
「まったく若気の至りで、恥ずかしい限りだよ。私になびかない女性なんていなかったから、躍起になっていた」
「それは私もわかっていたさ。でも、冗談であっても、声に出してしまえば、異能力は発動されてしまう。いや、君にはすまないことをしてしまっている」
「解除はできないのかい?」
「できない。一度出してしまった言葉は、二度と戻らないように。一度発動させた異能力は、二度と解除されない」
「じゃあ、私はまた君に会うために、何度も道に迷わなければならいのかな」
「そうなるねぇ。でも、二度と会えないことは無い。きっと、私が君に会いたいと思っていれば、また会うことができるはずだ」
「それは良いことを聞いた」
太宰は、意味ありげに、うふふ、と笑いながらふくろうを見つめる。
「それはつまり、今日、君は私に会いたいと思っていたってことだよね」
「ああ、そうなるね。また会うための方法を提示したら、どうやらこちらの羞恥を晒してしまったようだ」
『羞恥』と云いながら、ふくろうの顔に照れた様子はない。
大方、敦や国木田から話は聞いていても、会えない社員がいるからあってみたいと思っていただけだろうと、太宰は推察する。
年を重ねても、彼女との差は縮まっていないようだ。
「来たければ、連絡でもしてくれ。君に会いたいと願っておくから」
「私に会いたいと思いながら待っていてくれるなんて、ロマンティックだねぇ」
「さて、今度は口説き落とせるかな」
そう云って、ふくろうは挑戦的に笑う。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年11月30日 15時