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シン、と静かな社長室。
福沢も、ふくろうも何も言わない。
乱歩を除いて。
「だから言ったでしょ」
凛とした声が、静かだった室内に響く。
「スカウトしても、絶対に来ないって」
その言葉に、ふくろうは目を見開き、キュッと細めて優しいまなざしを乱歩へ向けた。
「さすが。名探偵にはお見通しだったか」
「だって、君は、この『世界』が大好きだろ」
スッと、翡翠の瞳がふくろうを見つめる。
ふくろうは、視線から目をそらさずに、小さく首をかしげて笑う。
「ああ、その通りだよ。私は、この世界を壊しかねない。だから君たちと深くは関われない。関わりたくない。私という爆弾が、この世界を、君たちを傷つけるようなことはしたくない」
「そうか」
福沢が、重々しく頷いた。
「そうだ、その代わりと言ってはなんですが」
そう云いながら、ふくろうはストールを取り、自分の首をあらわにする。
咽喉マイクをとり、2人の視線を誘導するようにゆっくりと、テーブルの上に置いた。
「私は、今後どの組織にも所属しません。永遠に中立の立場にいます」
両手を膝の上で合わせて、ふくろうは云った。
それは、彼らを安心させるための確かな誓いのように聞こえるが、そこに含まれているのは、これ以上の勧誘は受け付けないという強い意志だ。
特別仲の良い、ある意味『ひいき』にしている、探偵社であっても、自身の所属を今の『繁盛しない古書堂の店主』から、変えるつもりは無いという意思表示。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年11月30日 15時