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3人が近づいていくのと同時に女性は手を降ろす。
「すまんね、聞こえたものだから」
「ふーん。君が目撃者?第一発見者じゃなくて」
「両方かな。最初から最後まで見ていたからね。私が店に入った直後に起きたからね。デパートに入ってすぐ、少し離れた場所を通った男が目に入ったんだが、その直後に背中に銀色の何かが現れてな。なんだろうなーと思っているうちにそいつが倒れて、服と床が赤くなっていったんだよ。すぐ近くに人はいなかったし、男とすれ違った奴もいなかったよ」
「へぇ」
興味深そうに、乱歩が頷く。
女性は、やや楽し気に乱歩に話しかけ続けた。
「こう、クロスボウみたいなやつを、使ったんじゃないかと私は思っているんだがね。どうかね?名探偵」
「クロスボウ?」
首をかしげた敦に、女性が説明する。
「銃と弓矢を合わせたようなものさ。ばねの力を使って発射するから、女性でも扱えるし、使用するのにさほど練習は必要ない。最近じゃ、爪楊枝なんかを発射できるくらい小さいやつもあるみたいだから、ナイフを飛ばすくらいできるんじゃないか?まあ、発射するときにそこそこでかい音は出るが、サイレンサーの付いた銃よりは静かだ。にぎわう昼間のデパートなら、気にも止まらない音量だろう」
「刑事さん!こいつが犯人じゃないですか!!?」
女性の隣に座っていた男性が立ち上がって、箕浦に訴えた。
「何故だい?」
聞き返したのは乱歩だった。
「だってこんなに武器に詳しいんですよ!逆に、何で疑わないんですか!あなた、探偵なんでしょう?」
「探偵じゃなくて」
「探偵じゃなくて、名探偵さ。彼はね。しかも、世界一の」
訂正しようとしたところ、先ほどの女性が乱歩の言葉を遮って云った。
「そもそも、私が犯人だとしたら、わざわざ凶器について情報を明かすかい?まあ、嘘の情報を流して、この名探偵を混乱させることはできるだろうが、あいにくこの程度の錯乱なら見抜かれるさ」
女性の言葉に、箕浦、敦、そして乱歩までもが驚いた。
何故、そこまでこの女性はこの名探偵のことを知っている?
だが、云っていることに筋は通っている。
「君にはあとでいろいろ聞くとして、とりあえず、さっさと終わらせよう」
複雑怪奇な思考よりも、目の前の殺人事件。
そう思って、乱歩は眼鏡を取り出した。
自信満々に眼鏡をかけるがその動きがぴたりと止まった。
「どうしたんだ?」
箕浦が不審げに声を掛ける。
「異能が、使えない……」
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年11月30日 15時