検索窓
今日:3 hit、昨日:41 hit、合計:22,761 hit

ページ16

「……ほぅ」


カップをソーサーに戻しながら、ただ一言、そう云った。


「勧誘ねぇ。とても嬉しいお誘いだが、御断りするよ」

「何故だ?」


国木田は、まっすぐふくろうを見ていた。

ふくろうもまた、まっすぐ国木田を見返していた。


「一つ」


ふくろうは、人差し指を立てた。


「私は、探偵社に向いていない。二つ、私は、君たちとこうして話す以外に、深く関わるべきではないと思っている。三つ、私が探偵社に入ることで、ヨコハマの、ないしは世界のパワーバランスが崩れかねない。四つ、あくまで私はこの店の店主だ。来店してくれる客が来辛くなる状況にはしたくない。五つ、それに私は、今の暮らしが気に入っている。会社に入って時間に縛られるのは、単純に嫌だ」


国木田の前に小さな掌が差し出された。

その手をじっと見つめて、それから、小さく息を吐く。


「理由はわかった。だが、今後このような誘いはいくらでも来るだろう。何も社員として働いてほしいわけではない。貴様には、今まで通り、たまに出すこちらの依頼に協力してくれればそれでいいんだ」

「私のことを気遣ってくれてありがとう。だがね、国木田くん。異能力を保温機能に使ってはいるが、私は、自分がこれ以上ないほどの爆弾だという自覚はあるんだよ。ともすれば、この星ごと消滅させられるほどの威力のね」


そう云って、熱を放つポットに触れる。


「私の保護が目的のスカウトであれば、尚更だよ。そうだね、ここからは探偵社へ行って、社長の前で直々に話させてもらいたいんだが、アポイントメントなしで行っても大丈夫かい?」

「俺から連絡して、聞いてみよう」

「ありがとう」


国木田が席を立ち、外へ出る。

その背中を見ながら、空に近かったカップにお茶を淹れる。

丁度、最後の一杯だったようだ。

ゴールデンドロップを落とし、その、凝縮された香りを堪能する。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
39人がお気に入り
設定タグ:文スト , 文豪ストレイドッグス , 江戸川乱歩   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/  
作成日時:2020年11月30日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。