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「他にもいろいろと制約があるんだが、まあ、しゃべりすぎると私の身が危ないのでな。これくらいで勘弁してくれ。さて、何か質問はあるかい?」
女性は、優雅にほほ笑んで、まるで、世間話をしたかのような表情で、紅茶を一口飲んだ。
紅茶はすでに冷めきっていたが、それを気にした様子はない。
お菓子だけは、話しを聞いている間に乱歩がほとんど食べきってしまったが。
女性の想像以上の話に、敦は言葉が見つからず、乱歩は何かを考えるように、普段は閉じられている翡翠の瞳を開いて、女性を見つめていた。
「じゃあ聞くけど、君の周りでは異能力が使えないと云ったよね。でも、君はその中心にいながら異能力を使えている。どう考えても矛盾してるんだけど、どういう仕組み?」
乱歩の質問に、女性は答える。
「ああ、それはだね。君たちのところにいる、人間失格の無効化能力者のように、無効化しているわけではないんだよ。ただ、『使い方を忘れる』だけなんだ。異能力を持っている人は、それぞれ、無意識のうちに使い方を覚えている。だから、使い方を忘れさせれば、必然的に使えなくなるというわけだ。だけど私の異能力は、声を出すだけで発動するから、使い方を忘れたとしても、問題なく使えるというわけさ」
「なるほどね」
そう云って、最後のマカロンを口に放り込んだ。
「名探偵の口に、私の作ったお菓子が合ったようでよかったよ」
ニコニコと空になった皿を見ながら、女性が云う。
「え、これ、手作りだったんですか!?」
「ああ。さっきも云った通り、私の店は常に閑古鳥が鳴いているからな。暇つぶしにいろいろ作るんだが、いかんせん、作るのが楽しいだけでな。たまに店にも置いて見たりするんだが結局売れ残る。こうして食べてくれるのは嬉しいよ。ついでに云うなれば、料理も得意だよ。この前はスパイスから調合したカレーを作った。なかなか奥が深かったよ」
「そ、そうですか……」
楽しそうに語る女性からは、先ほど話された異世界から招かれたという様子や、記憶を失った様子、そして、一歩間違えれば世界を滅ぼしてしまえるほどの異能力を持っている様子も、窺うことはできない。
それほどに、この女性は普通だった。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年11月30日 15時