特別授業 ページ12
拓実が保健室のドアを開けた。
「失礼します！」
入学したての新1年生のような
元気がいい挨拶で
保健室へ入ると、
奥からキィーッと椅子が軋む音がする。
「拓実？入ってー。奥！」
姿が見えないけど、声でわかる。
純喜だ。
左にベッドが三台並び、
更に奥へ進むと
純喜がプリントの採点作業をしていた。
プリントに視線を留めたまま、
純喜が更に奥にある相談スペースを指差すと、
拓実は一応ペコリとお辞儀をして、
相談スペースへ入っていった。
相談スペースはパネルで区切られた
簡易的な個室になっている。
保健の先生との相談や
先生との進路相談などに使われる部屋だ。
でも、
純喜が保健室にいるようになってからは、
しょうもない恋愛相談や
雑談をしにくる生徒たちの
憩いの場となっていた。
丸いテーブルとパイプ椅子が四脚
雑然と並んでいる。
ワックスの効いたヘリンボーン柄の床に
強い日差しが差して、テカテカと照っていた。
遅れて純喜が相談スペース入ってきた。
片手には数学の教科書、
もう一方にはコンビニのおにぎりだ。
拓実は、昼休みに数学の補習を受けている。
昼休みの補習は、純喜からの提案だった。
『お前の成績やと・・・相当やばいで。
次のテストで点数とらんと、
卒業すらヤバい。』
前回の定期テスト後に言われた
純喜の言葉だ。
拓実も自分の数学の成績が
相当ヤバいことぐらい知っている。
そんなこと純喜に言われなくても
わかっている。
分からないものは分からないし、
やる気の出ないものは出ない。
1，2年生の頃の先生は基本的に放置だった。
分からなければ、
同じ問題、同じプリントを解けば
進級させてもらえた。
上手いこと逃げてきた。
でも、純喜は違った。
逃げようとする拓実の首輪を引っ張って
どんどんリードを短く持って、
拓実本体を捕まえて逃さない。
純喜の熱意に負けて、
拓実は仕方なく保健室に通い始めた。
初めは週二回だった。
でも、拓実が相談スペースに来ると、
純喜も数学だけじゃ退屈なのか、
『いかに大学が楽しいところなのか』とか、
『早く俺も彼女が欲しい』とか、
たわいもない話を始めた。
そんな話を聞いていると、
拓実も純喜の話が面白くなって、
次第に補習に通うのも億劫ではなくなり、
むしろ数が増えていった。
いつの間にか数学の点数も少し伸びた。
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ののん(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます！色々あれやこれや悩んで試行錯誤しながら書いておりますので、そう言っていただけると、本当に励みになります！りんさんのコメント読んで嬉しくてニヤけちゃいました笑 (2021年4月29日 1時) (
レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - こんにちは。瑠姫くんの12時〜シリーズからののんさんのお話のファンになったのですが、このお話ほんっっっとに好きです､､､。本物の小説を読んでるみたいにドキドキしてしまいます。いつも素敵な物語をありがとうございます(T^T) (2021年4月28日 1時) (レス) id: a55fc0b198 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - はっぱさん» コメントありがとうございます(^^)全部読んでくださったんですか？ありがとうございます(T_T)期待に添えるお話を書けるかどうか不安ですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです! (2021年3月31日 23時) (レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
はっぱ - ののんさんのお話全て読ませていただきました！今回も推しの純喜くんが出るのでさらに楽しみです！ (2021年3月31日 13時) (レス) id: ede0d803b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ののん
| 作成日時：2021年3月28日 23時
