最終審査をおえて ページ47
土日はともと歌の練習、ダンス練習、家に帰ってテスト勉強とレポート作成で終わった。
月曜日のテストは無難に終えて、いよいよオーディションの最終審査だ。
今までは各エリアごとに別れての審査だったが、最終審査は全国から精鋭の最終選考者が集まってきているようだった。
誰が受かるか分からないけど、
柴犬のような少年が端っこでダンスの練習をしていて、あの子は受かるだろうな、と思った。とても上手だった。
とももずば抜けてイケメンで、最終選考者の中でもかなり目立っていた。
俺は、周りのそんな様子を見て一瞬萎縮した。でもすぐに落ち着きを取り戻した。
最終審査の部屋に入る時もしっかりドアノブを握ってドアを開けた。
『與那城先輩の優しい歌声に、感動したのです。
先輩の声は柔らかくて、キレイで、すぐに虜になったのです。』
急に数カ月前に言っていた彼女の言葉が一字一句違わず彼女の声と共に頭に流れてきた。
突然の事で訳が分からなくなったけど、
あの時の彼女の真剣な表情を思い出すとちょっと笑えてきた。
あんな頑固なコも歌声で振り向かせたんだから、俺、大丈夫かも。
根拠のない自信によって何だか強くなれた気がした。
最終審査の結果と今後のスケジュールは速達で封書が届くとのことだった。
結果が届くまでは、なんにも手が付かないと思っていたけど、テストとレポートがたんまりたまっていたおかげで、意外と気にならなかった。
次の日もテストだった。
３限のテストを終えた後、講義棟を歩きながら、彼女に電話を掛けた。
『はい。』
いつも通りワンコールで出た。
「もしもし。授業終わった？」
『はい。』
「俺も。今日この後まだ授業あるの？」
『いえ。レポート提出するだけで、今日はもう、 あ。』
彼女が黙った。
「ん？どしたの？」
電話を繋いだまま
後ろを振り向くと、彼女がいた。
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作者名：ののん
| 作成日時：2020年5月13日 22時
