彼女は俺の筋肉以外の秘密を知っている３ (ページ30)

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ASide 回想
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サッカーサークルの歓迎会後、初めてのライブの日やった。

金曜日の夕方。
下北沢駅南口徒歩５分。
黒い外壁のライブハウス。
私の大事な時間。

会場に入ると、ガヤガヤとして、割と混んでいた。

いつものように一番後ろの席の高いスツールに座った。

今日のライブは
彼ともう一人、男の子とのデュエットやった。

彼はソロで出演していることが多いけど、たまにデュエットでもやるみたいやった。
彼が出演してるのは全部見てるからわかる。

彼がアコースティックギターを持ってステージに入ってきた。

２人横並びに座った。
会場が暗いまま音楽が始まる。

ポロンというアコースティックギターの音色。

彼が歌い出すと、
一瞬で会場の雰囲気が変わる。

彼の世界に引き込まれる。

温かい、柔らかい、優しい歌声。

今日は何かが違う。

違うのは私や。

確かめたい。

私の大好きな歌声。

辛いとき私を引っ張り上げてくれた歌声。

胸がドキドキする。

早く顔を見たい。

ステージに明かりが灯る。

私は息を飲んだ。

やっぱりそうや。

彼は黒のキャップをかぶってて、顔を隠そうとしてるし、遠くから見てたから全然気づけへんかったけど、やっぱりそうや。

あれは與那城先輩や。

憧れの歌声がこんなにも近くにいたんや。

私は歌を聞いてる間
ずっと胸のドキドキが止まらんかった。