葛藤 ページ30
彼女が小さな耳にイヤホンをつけて
歌を聴いている
ホームに立って
電車が来るのを待っている
俺の歌を聴いてくれてるのだろうか
さらさらの長い黒髪が
春の風に揺れている
電車が入ってくる
彼女が電車の扉が開くのを待っている
あ、ちがう、そっちは東京方面の電車じゃない
声をかけたいのに
何故か声が出ない
喉がつっかえている
彼女は俺に気づかずに
扉が開いた電車に足を踏み入れる
そっちじゃないよ
俺は手を伸ばして彼女に追いつこうとするけれども一向に追いつけない
電車の扉が閉まるアナウンス
もう彼女は、下北沢には行かないのか
もう来てくれないのか…
バタンと
電車の扉が閉まる
所在のない右手が
虚無の中に溶けていく
そこで俺は目が覚めた。
手を伸ばして、
部屋の空気を握ろうともがいている。
圧倒的な失望感が
胸いっぱいに広がった。
夢か…？
あまりに鮮明な映像で
夢なんだか現実なんだか
目が覚めても、まだ頭がこんがらがっている。
あれ、どっちが夢なんだろう？
俺は手元にあった携帯がチカチカ明滅しているのに気がついた。
中野那奈心3限遅れますよ!
この胸の閉塞感も、
彼女が隣にいないのも、
どっちも現実だったのだ。
俺は珍しく月曜３限の心理学概論に遅刻した。
昨日バイトが終わって家に帰って
すぐに寝ようと布団に入ったけど、
色々考えてたら、
いつの間にか朝日が昇っていて、
気づいたらお昼の１２時４５分を過ぎていた。
どうせ今から行っても遅刻だからと
ゆったりお風呂に入って
お昼ごはんも食べて家を出た。
１４時２０分。
もう３限が終わるころだ。
俺はもう授業に行っても意味がないのに
何故か大講義室の前に立っていた。
無意識に会わなきゃいけないと思った。
彼女になのか、那奈心ちゃんになのか
わからない。
俺は大きなため息をついた。
自分で蒔いた種なのに、感傷的になって
あんな夢なんか見て、バカだなあ。
告白された時、すぐに那奈心ちゃんに
「ほかに好きな人がいる」と言っていれば、
いや、その前に那奈心ちゃんに
「あの子が好きなんですか？」
と言われたときに
素直に「好きなんだ」と言っていれば、
良かったのに。
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ののん(プロフ) - コメントありがとうございます!!これからも更新頑張ります^^ (2020年4月21日 23時) (
レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
りさ(プロフ) - 大好きです！これからも更新楽しみにしてます(^^) (2020年4月20日 23時) (レス) id: f70137444b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ののん
| 作成日時：2020年4月20日 21時
