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まだスタート地点からそれほど進んでいない場所にいる私たちは急いでゴールを目指さなければならない。
鏡映しになっていることがわかったとしても、どちらの足から、どれくらいの歩幅で、どんなスピード感で…考えることが多すぎて、息が浅くなる私の耳に柔らかい声が届く。
「Aちゃん。壁に手、あてて？」
「えっ……はい…」
優しい声色に気づけば壁に左手を添えていた。
「今、俺の手とAちゃんの手、重なってるからね。一緒にゴールしよう」
彼の言葉は心にすとんと落ちて、例え見えないとしても昨夜、彼が私の様子を伺うように見せた笑みがそこにあるような気がした。
――たとえ、壁で遮られていたとしても手のひらの温度が伝わってくるようだった。鼓動を乗せた2つの脈拍が、触れた先で1つのリズムを作り出す。
頭の中で思い描いた景色につられるように壁に添えた手に視線を移せば、ぼんやりとした光が手のひらを型取るように線を描いている。
そして、それは私のよりも少し大きな手のひらの輪郭も描き出し、2つの手のひらはぴったりと重なっていた。
「え…ほんとに、重なってる……」
私が驚いたままに口にすると壁の向こうにいるコヤマさんは「息ぴったり、みたいだね」とほほ笑むように言った。
「それじゃあ、いくよ」
コヤマさんが左足を動かしたからだろうか、私の右足も軽く持ちあがる。
「はい…！」
どちらかが抵抗することも無理に駆け出すこともなく、天秤が均衡を保つように調和している。
時折、行き止まりに邪魔されながらも、右へ左へと曲がり正解の道を見つけ出していく。
鏡映しのルートのせいで、壁に浮かび上がっていた手の形をした光は今は重なっていないが、それでも置いてけぼりのような心細さはなかった。
何度も曲がった先で不意に道が開けると、私たちの足は自然と止まった。
「Aちゃん、目の前に壁、見えてるかな？」
はい、と返事すると同時に壁に手を当てると、光が私の手をなぞる。
そして、もう1つの線が浮かび上がる。
「あとはまっすぐ行けばゴールみたいだね」
コヤマさんの言葉にほっと息をつくも、後ろを振り向けば壁はどんどんスピードを上げて迫ってきていた。
今までのように足取りを確かめるように歩を進めていては間に合わない。
「このままじゃ…」
「走ろう！」
「でも……！」
わかっていてもつい出てしまったためらいの言葉を彼が遮る。
「Aちゃんの好きなように、走って！」
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Nono(プロフ) - soboroさん» soboroさん、コメントのお返事がとっても遅くなってしまい、ごめんなさい…！楽しみに待っていただき、そしてこのページに遊びに来てくださりありがとうございます！！ (2023年3月27日 21時) (
レス) id: b787eddcb9 (このIDを非表示/違反報告)
soboro - 更新ありがとうございます！密かに楽しみに待ってたのでとっても嬉しいです！ (2022年11月15日 0時) (レス) @page26 id: fea91e615b (このIDを非表示/違反報告)
Nono(プロフ) - momoさん» momoさん、コメントありがとうございます…！確か、以前にもコメントをいただいたかと思うのですが、長い間待っていただいて本当にありがとうございます！改めて楽しんでいただけるように頑張ります！よろしくお願いいたします！！ (2022年9月19日 19時) (レス) id: 2d0e74762d (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - ずっとお話の更新待ってました、！めっちゃ嬉しいです！ 無理のない程度に頑張ってください！本当に更新ありがとううございます！！ このシリーズのお話ホントに大好きです！ (2022年9月18日 23時) (レス) @page18 id: 6dd93aac59 (このIDを非表示/違反報告)
Nono(プロフ) - 紗奈さん» 紗奈さん、こんにちは！コメントありがとうございます！過去作品も楽しんでいただけてとても嬉しいです…！！今作も楽しんでいただけるように、頑張りますね…！！ぜひまた遊びにきてくださいね！ (2020年12月13日 18時) (レス) id: 250d3608a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Nono | 作成日時：2020年10月29日 23時
