【ポケモンSV】前を向こう【チリちゃん】 (ページ8)

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＊ページ8

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｢ごめんね…私、疲れたからもう行くね｣

｢誰も行っていいなんて言(ゆ)ってへん｣

いつもより数段低い声で、ガシッと腕を掴まれる

それでもAは振り返らない

こういう時の振り切り方が分からなくて、かける言葉も見つからなくて、ついには黙り込んでしまう

｢…｣

｢…そない黙られてもなぁ｣

いつもと様子が違う

約束を破った時から何となく違和感を感じていたチリだが、会うとその異変に気づいてしまい覗き込むように横からAの顔を見た

そして、目を見開いた

｢どないしたんや…その頬は｣

｢…｣

あー…見られたくなかった

｢…誰にやられたんや｣

静かな怒りが、オーラのように溢れている

普段の顔のそれではない

誰も近寄らないほど怖くて、まるで別人のよう

…あの子たちが見たらどう思うんだろう

｢…夜、寝てる、時に…シャルが｣

ジニアの時にはスラスラと言えていた言葉も、チリの前では息が詰まったかのように上手く出てこなくて、Aは元々合わせてなかった視線を更に横へズラす

…目も合わせてくれへん

ジニアはあえて聞かなかったが、チリはAのそれを見過ごせるほど大人ではない

というより、友人の怪我を見て見ぬふりなんて出来ない

真夏に起きた怪我のように、見過ごせばこの子は本当にに止まらなくなると…

研究者の血が騒ぐとか、そないなことで居らんくなられんのはチリちゃん嫌やで？

｢…それがホンマやったらええけど、嘘ついてるんやったらチリちゃんもう一生Aちゃんと口きかへんけど…それでええんか？｣

｢！？…っ｣

口を、きかない…

チリの意地とも取れるその突き放す言葉に、Aは驚きのあまりやっと視線を合わせた

苦しそうな顔に、瞳が大きく揺れる２人

Aだって不機嫌になると、口をきかない時はあるが一生ではない

それをチリは“一生”と答えた

一生口をきかれなくなる…そんなの、Aには到底耐えられない

｢…っ、それは…｣

Aは、下唇を噛んで何かに耐えていたが、それもなかなか引く気のないチリを前にしてついに折れてしまった

…チリちゃん、それは…嘘であってほしかったな

どうやっても、絶対になってしまう話じゃんか

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