思い出した! ページ35
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チリの言葉を聞いてからと言うもの、俯いた少女の顔は長い金の髪で見えない
だが、図星でも付かれたかのように隙間から見える唇は固く結ばれ震えている
自分なんやろ?辛いのは…
この重い空気の中、チリはもう一度口を開こうとした
したのだが、それを遮るものが…
『電話ロト〜!!』
「!?!!」
静けさが広がっていた空間に、突如として現れたスマホロトムの通話を知らせる声
それにチリはともかく、自分の携帯である本人が大袈裟なくらいに肩を飛び上がらせて危うくベンチから落ちそうになった
「も、もしもし」
まるで、腰の低いビジネスマンが取り引き先と会話するような体制で少女は電話に出る
「うん…も、もちろん今はちゃんと病院で安静にして…え、じゃあなんで風の音が聞こえるのかって?そ、そりゃあれだよ…今、エアコンが効いてる…嘘じゃないって姉さん…!ちゃんと安静にしてるから…!」
小声で(嘘をついているのは)チリには聞こえていないが、後ろ姿から焦っているのは分かった
その後も、一言二言と交わしてから通話を終え振り向いた少女は焦ったように「失礼します…!」と言って走り出してしまう
「ちょっ!そっち行っても、草むらしか……」
どこに向かっているんだ!と少女へと伸ばした手が、急に力を失う
「…あ」
金の髪が揺れる後ろ姿に、チリは思わず固まってしまった
ずっと靄がかかっていた違和感が、晴れていくのを感じる
そうや!あの子、今朝の海辺の少女!
やっと分かった時にはもう姿がなくて、やってしもたぁと溜め息と脱力感から浮きかけた背中を再びベンチに預ける
「名前、聞きそびれてしもたやん」
橙の空が蒼に染まり始めていた
結局、その日を境に2人が会うことなくチリは留学期間を終え、パルデアに戻る事となってしまった
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「例の転入生、知ってる?」
「知ってる〜」
それからしばらくして、ククイの言う通り転入生の話が生徒の間では盛り上がっていた
トップが気に止める人物…A…さん
それも気になったが、今はあの金の髪の少女がチリには気がかりだった
元気にしているのか…あの気持ちはどうなったのか…名も知らない少女が心配で、最近は上の空に色んな女子から心配をかけさせてしまっている…なんて女
「べっぴんさんやねんから、顔色さえ良うなればもっとええのに……?」
ため息混じりに呟きながら人気のなくなる放課後の廊下を歩いている時だった
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きら(プロフ) - パピコさん» コメントありがとうございます!ですよね!チリちゃんの妄想が止まらなくてつい書いてしまったんです。ちなみにアンケートの件、実際どうでした?。ブルロの推しかぁ…結構分け隔てなく推しているんですが、強いて言うなら潔くん蜂楽くんですかね*´꒳`* (2023年2月23日 11時) (レス) id: a4108a0bcf (このIDを非表示/違反報告)
パピコ(プロフ) - 初コメ失礼します。小説とても面白いです!チリちゃんの小説割りと少ないのでチリちゃんの面白いのあって嬉しいです。あと余談なのですが、私もブルロ沼ってます!ブルロいいですよね〜。誰推しとかありますか?私はお嬢、凪くん、蜂楽推しよりの箱推しです! (2023年2月23日 10時) (レス) @page42 id: 1442eac3b7 (このIDを非表示/違反報告)
きら(プロフ) - 餅さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けるなんて恐縮です( ̄^ ̄゜)文章力は貧しいかもですが、これからもこの作品をよろしくお願いします(>人<;) (2023年2月9日 3時) (レス) id: a4108a0bcf (このIDを非表示/違反報告)
餅(プロフ) - 初コメント失礼します。一番初めの導入でグッと引き込まれてから、面白くてあっという間に読み終えてしまいました…!先程お気に入り登録致しましたので、続きを楽しみにお待ちしております! (2023年2月8日 21時) (レス) id: 2288440125 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きら | 作成日時:2023年1月23日 21時