パーティの準備 ページ39
「遅かったね、Aちゃん」
何処か不機嫌気味な声が聞こえて来て、Aは足元から顔を上げた。
いつの間にか太宰と初めて会った橋のところまで歩いて来た様だ。声を掛けて来た彼は、欄干に肘をつきながらジト目でAのことを見ている。
「学校の敷地に迷い込んでいた猫を捕まえてたんです。て云うか、今日は校門前ではなく此方で待ってたんですね」
「まあね。Aちゃん、目立つの嫌いみたいだから」
太宰はニコリと微笑んだ。まるで「褒めてくれても佳いんだよ?」とでも云いた気な表情だ。
まぁ、Aとしてはそんな気遣いが出来たのなら最初から待ち合わせ等はこの橋の辺りにして欲しかった訳だが。
彼女は態とらしく肩をすくめて大きなため息を吐いた。
「で? 今日の予定は?」
「今日はねぇ、君をパーティーに誘おうと思って! 『中也君・解放されておめでとう&お疲れさまパーティ』に!」
Aの手を取ってウキウキとした様子で歩き始める太宰とは対照的に、Aの目は死んでいる。
……其のパーティ、中原君が聞いたら絶対嫌な顔しそう。何かの嫌がらせのつもりなんだろうなぁ。
Aは心の中で呟いた。大正解である。
*
「あ、蘭堂さんにAちゃん。その飾りはもう少し右に……。そうそう、そんな感じ」
……なんで私、つい数分前に知り合った人と飾り付けしてるんだろう。
Aの心境を表すならば、『ただただ気まずい』。それだけである。
一方、つい数分前に『蘭堂』と名乗った男はそんな様子を微塵も見せずに、太宰のオーダー通りに飾り付けをしていた。蘭堂は所々太宰と会話を挟みつつ、彼の口から告げられる中也への嫌がらせの数々を聞きながら、Aと二人して太宰に対して完全に引いていた。
出会ったばかりでも、思わず心境が一致してしまうほどには太宰の嫌がらせが酷すぎて、中也へ同情せざるを得なかったのだ。
*
そして其の後に物騒な会話が始まり、『《荒覇吐》事件の犯人』とやらが蘭堂だと太宰が告げたあたりで、Aは酷く後悔した。
やっぱ適当に理由付けて帰ればよかったな。
その後、中也によって建物の外に放り出された蘭堂を見ながら、Aは先程と同じことを考えた。
「Aちゃん、怪我したくなかったらこの部屋から出ないでね」
太宰までもがいそいそと部屋を出て行った。
一人取り残されたAは、取り敢えずはケーキを食べることにした。
どのみち危険な事には変わりない→←太宰の未来での友人との出会い 二
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息抜き(プロフ) - 黒猫さん» 結果主人公の心情優先で書いて、場面を飛ばし飛ばしにしてた箇所もあったのですが、上手く伝わっていた様で良かったです……。続編も更新頑張りますね! コメント有難う御座いました! (2022年12月25日 23時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 初めてのコメント失礼します!読みました!すごく面白かったです。文ストを見ていてチェンソーマンは少ししか見てないのですが、それでも場面の情景が鮮明に想像できました。毎日読みたいくらいハマりました!十五歳編完結おめでとうございます。更新頑張ってください! (2022年12月25日 21時) (レス) @page50 id: 68362437f9 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 温泉煮卵!さん» 有難う御座います! 十六歳編、色々と準備してる段階なので気長にお待ちください……。 (2022年12月25日 10時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
温泉煮卵!(プロフ) - 十五歳編完結おめでとうございます、十六歳編の更新も待ってます!蘇生のシーンとか、特に楽しみです…! (2022年12月25日 0時) (レス) id: 61be09a0bb (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - えむさん» コメント有難う御座います! 頑張りますね! (2022年12月6日 2時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:息抜き | 作成日時:2022年11月3日 3時