太宰の未来での友人との出会い 一 ページ37
……あの人ずっと彼処にいる。不審者かも。
終礼中、Aは頬杖を突いて窓の外を眺めていた。彼女からだと、丁度裏門が見える位置だ。
塀と木々に囲まれている為に佳くは見えないが、チラリと砂色の外套が見えた。服の向き的に、恐らくは校舎の方を見ている。其れがほんの数秒の出来事ならまだしも、彼此五分間は其の儘だった。
……不審者かも。
Aは心の中でもう一度呟くと、ゆっくりと視線を教卓の方へと向けた。
終礼が終わった後、Aは何故かあの男の事が気になって、靴を履き替えると裏門へと向かって行った。
裏門を利用する生徒は数少ない。殆どが駅を利用するか、友人達と直ぐ近くにあるショッピングモールへと向かう為に正門から出て直ぐの道を利用する。
そんなこんなでAが裏門へと近づいたのは、実は今回を含めて片手で数える程しか無いのだ。
*
「あの」
うわぁ、まだいる……、などと云った心の声はなるべく顔に出さない様に、Aは努めて冷静に声を掛けた。
矢張り砂色の外套を纏った男は校舎の方へと体を向けていたが、Aに声を掛けられた事によって其の視線は彼女へと向けられる。
「うちの高校に何か御用ですか?」
「?」
「いえ、ずっと校舎を見ている様でしたので」
何処か納得した顔をした後に、男は「高校に用があった訳じゃない」とそう云った。そして其の儘、再び校舎の方へと視線を向ける。
……いや、違うな。
近くから男を見て気が付いたが、男の視線は校舎と云うよりも、彼の直ぐ目の前──塀の中にある一本の木に向けられていた。
そっと男の横に並び、Aも彼の様にその木を眺めてみる。
「──あ、猫」
「あぁ、猫だ。用があるのは、高校じゃなくて彼奴だ」
そう云って男は懐から一枚の写真を取り出した。其れはでっぷりと太った猫の写真。木の枝に登り、何処か莫迦にするかの様な視線を男に向けている猫とそっくりな猫がいた。
「成程、猫を探しに来てたんだ……」
不審者じゃなかった……。
男はそんなAの心の声には当然気がつく事はなく、再び丸々としたフォルムの猫へと目を向けた。
*
「知り合いのお婆さんに頼まれてな」
「はぁ」
先程の会話からほんの少しだけ気を許したのか、お互いに声色が少しだけ柔らかくなった。その事に気がつかない儘に二人は会話を続けた。
「世間話をする程度の仲だが、断るに断れなかったんだ」
「成程……」
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息抜き(プロフ) - 黒猫さん» 結果主人公の心情優先で書いて、場面を飛ばし飛ばしにしてた箇所もあったのですが、上手く伝わっていた様で良かったです……。続編も更新頑張りますね! コメント有難う御座いました! (2022年12月25日 23時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 初めてのコメント失礼します!読みました!すごく面白かったです。文ストを見ていてチェンソーマンは少ししか見てないのですが、それでも場面の情景が鮮明に想像できました。毎日読みたいくらいハマりました!十五歳編完結おめでとうございます。更新頑張ってください! (2022年12月25日 21時) (レス) @page50 id: 68362437f9 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 温泉煮卵!さん» 有難う御座います! 十六歳編、色々と準備してる段階なので気長にお待ちください……。 (2022年12月25日 10時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
温泉煮卵!(プロフ) - 十五歳編完結おめでとうございます、十六歳編の更新も待ってます!蘇生のシーンとか、特に楽しみです…! (2022年12月25日 0時) (レス) id: 61be09a0bb (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - えむさん» コメント有難う御座います! 頑張りますね! (2022年12月6日 2時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:息抜き | 作成日時:2022年11月3日 3時