検索窓
今日:16 hit、昨日:18 hit、合計:81,687 hit

二人が居ぬ間に、地獄に招く事が出来るか如何かの実験 ページ29

「あ、Aちゃん。ごめんね、大丈夫かい?」
 Aは太宰の云わんとしている事が判った。死体を目にして座り込んで、顔まで伏せているのだから、またあの時の様に吐いてしまわないか、気分が悪くなってしまったのかを聞いているのだ。
 Aは顔を伏せたまま大丈夫だと答えた。
「屋敷の中に行くからAちゃんも行こう」
「すみません。吐き気とかはもう大丈夫だけど、暫く此処に座って休んでおきますね」
「……判った」
 太宰はAを置いて屋敷へと歩き始める。中也がAのすぐ側にしゃがんで、そっと背中に手を当てた。
「嫌なもん見せて悪かったな。無理すんなよ」
 そう云ってAの頭にポンと手を置いて立ち上がった。それが、義姉の姿と被って見えた。
「君が──」
 不意に聞こえた声に、中也が足を止めた。
「君が私の義兄さんだったら佳かったのに」
 中也はその言葉の意味を深く考えず、「そりゃあ光栄なこった」と云いながら屋敷へと向かった。
 


 暫く経ったが、太宰達は未だ戻ってくる様子はない。
 一方でAはと云うと、先程まで自分達に攻撃をしてきた相手と、中也によって思い出した義姉と義兄、そして普通ではない自分にずっと苛々としていた。
「そうだ。実験をしよう。ずっと気になっていた事があるんだ」
 Aは顔を上げてそう云った。実験と云うより、軽く憂さ晴らしをしてこの陰鬱な感情を止めたいだけだった。

 Aは武器人間達を呼び出せるが、この世界に悪魔は存在しない。だが、地獄の悪魔は如何なのだろう。何処からともなく現れる扉で、次元すら超えて現れるのではないだろうか。

 Aは自分を殺そうとしてきた相手に、能力を使っても罪悪感を覚えない。彼女がかつて太宰に云った通り、純粋な善人などではない。
「いいよね、別に。君達が先に私達を殺そうとしてきたんだから、お互い様だよね。実験に付き合ってね」
 Aはそう云って、太宰が無駄撃ちした死体の元へ歩き、そっと頭に手を置いた。
「地獄の悪魔よ」
 辺りにAの声が響いた。次に死んだ筈の男の声が響く。
「わたしのすべてをささげます。なのでどうかここにあるしたいすべてを」
 「じごくへまねいてください」と言葉が発せられる前に、低い声が其れを遮った。
「おい、何してる」
 Aはパッと声のした方へ顔を向ける。

 中原中也が、空に浮かびながらAの事を見ていた。

普通とは 一→←全然平穏ではない。むしろ物騒



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (152 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
248人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

息抜き(プロフ) - 黒猫さん» 結果主人公の心情優先で書いて、場面を飛ばし飛ばしにしてた箇所もあったのですが、上手く伝わっていた様で良かったです……。続編も更新頑張りますね! コメント有難う御座いました! (2022年12月25日 23時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 初めてのコメント失礼します!読みました!すごく面白かったです。文ストを見ていてチェンソーマンは少ししか見てないのですが、それでも場面の情景が鮮明に想像できました。毎日読みたいくらいハマりました!十五歳編完結おめでとうございます。更新頑張ってください! (2022年12月25日 21時) (レス) @page50 id: 68362437f9 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 温泉煮卵!さん» 有難う御座います! 十六歳編、色々と準備してる段階なので気長にお待ちください……。 (2022年12月25日 10時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
温泉煮卵!(プロフ) - 十五歳編完結おめでとうございます、十六歳編の更新も待ってます!蘇生のシーンとか、特に楽しみです…! (2022年12月25日 0時) (レス) id: 61be09a0bb (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - えむさん» コメント有難う御座います! 頑張りますね! (2022年12月6日 2時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:息抜き | 作成日時:2022年11月3日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。