二人が居ぬ間に、地獄に招く事が出来るか如何かの実験 ページ29
「あ、Aちゃん。ごめんね、大丈夫かい?」
Aは太宰の云わんとしている事が判った。死体を目にして座り込んで、顔まで伏せているのだから、またあの時の様に吐いてしまわないか、気分が悪くなってしまったのかを聞いているのだ。
Aは顔を伏せたまま大丈夫だと答えた。
「屋敷の中に行くからAちゃんも行こう」
「すみません。吐き気とかはもう大丈夫だけど、暫く此処に座って休んでおきますね」
「……判った」
太宰はAを置いて屋敷へと歩き始める。中也がAのすぐ側にしゃがんで、そっと背中に手を当てた。
「嫌なもん見せて悪かったな。無理すんなよ」
そう云ってAの頭にポンと手を置いて立ち上がった。それが、義姉の姿と被って見えた。
「君が──」
不意に聞こえた声に、中也が足を止めた。
「君が私の義兄さんだったら佳かったのに」
中也はその言葉の意味を深く考えず、「そりゃあ光栄なこった」と云いながら屋敷へと向かった。
*
暫く経ったが、太宰達は未だ戻ってくる様子はない。
一方でAはと云うと、先程まで自分達に攻撃をしてきた相手と、中也によって思い出した義姉と義兄、そして普通ではない自分にずっと苛々としていた。
「そうだ。実験をしよう。ずっと気になっていた事があるんだ」
Aは顔を上げてそう云った。実験と云うより、軽く憂さ晴らしをしてこの陰鬱な感情を止めたいだけだった。
Aは武器人間達を呼び出せるが、この世界に悪魔は存在しない。だが、地獄の悪魔は如何なのだろう。何処からともなく現れる扉で、次元すら超えて現れるのではないだろうか。
Aは自分を殺そうとしてきた相手に、能力を使っても罪悪感を覚えない。彼女がかつて太宰に云った通り、純粋な善人などではない。
「いいよね、別に。君達が先に私達を殺そうとしてきたんだから、お互い様だよね。実験に付き合ってね」
Aはそう云って、太宰が無駄撃ちした死体の元へ歩き、そっと頭に手を置いた。
「地獄の悪魔よ」
辺りにAの声が響いた。次に死んだ筈の男の声が響く。
「わたしのすべてをささげます。なのでどうかここにあるしたいすべてを」
「じごくへまねいてください」と言葉が発せられる前に、低い声が其れを遮った。
「おい、何してる」
Aはパッと声のした方へ顔を向ける。
中原中也が、空に浮かびながらAの事を見ていた。
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息抜き(プロフ) - 黒猫さん» 結果主人公の心情優先で書いて、場面を飛ばし飛ばしにしてた箇所もあったのですが、上手く伝わっていた様で良かったです……。続編も更新頑張りますね! コメント有難う御座いました! (2022年12月25日 23時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 初めてのコメント失礼します!読みました!すごく面白かったです。文ストを見ていてチェンソーマンは少ししか見てないのですが、それでも場面の情景が鮮明に想像できました。毎日読みたいくらいハマりました!十五歳編完結おめでとうございます。更新頑張ってください! (2022年12月25日 21時) (レス) @page50 id: 68362437f9 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 温泉煮卵!さん» 有難う御座います! 十六歳編、色々と準備してる段階なので気長にお待ちください……。 (2022年12月25日 10時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
温泉煮卵!(プロフ) - 十五歳編完結おめでとうございます、十六歳編の更新も待ってます!蘇生のシーンとか、特に楽しみです…! (2022年12月25日 0時) (レス) id: 61be09a0bb (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - えむさん» コメント有難う御座います! 頑張りますね! (2022年12月6日 2時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:息抜き | 作成日時:2022年11月3日 3時