【文スト】平穏な暮らしを望みます 〜十五歳編〜

全然平穏ではない。むしろ物騒 ページ28

太宰の云う知人とやらの自宅へ向かう間、Aは胃がキリキリとしていた。
　ただお茶をしに行く様な気軽なものかと思ったが、中也と太宰の小競り合いの末に太宰が発したのが「調査」だの「爆発」だの「《荒覇吐》」だの、よく内容は理解できなかったが、どれもこれも平穏とは程遠いものだったからだ。
　
　これ以上話を聞いていたくない……。面倒事に巻き込まれたくない。
　Aはせめてもの対策で、鞄からイヤホンを取り出して耳に嵌めた。
　その時は、数秒後にイヤホン越しでも判るほどの爆発音が響くだなんて思ってもいなかった。

　「か、帰りたい……」
　太宰に手を引かれて連れてこられた先に見えたのは、半分ほど吹き飛んだ屋敷と、七、八人の銃を武装した人間だった。

＊

　隊長格である相手を、中也が気絶させた。随分と呆気ないものだった。Aは先程感じた恐怖よりも、「異能って凄いんだなぁ」と云う関心の方が勝っていた。
「手前は見てただけだったな、役立たずの包帯野郎？」
「暴れん坊自慢の小学生と違って、僕はちゃんと敵からの情報を取ってた」
「……あの、私はその辺にいる高校生なので」
　Aは特に必要のない情報を申告した。中也は呆れた目で「一般人の手前にゃ、そんな無茶なこと期待してねえよ」と云った。とても有難い。
　「残りが応援に駆けつけてるらしい」と云う太宰の無慈悲な情報が告げられると同時に、十名ほどの人影が現れた。

　再び戦闘が始まった。中也が楽しげに敵を鎮圧していき、太宰は銃弾の飛び交う中を平然とした顔で立っている。
　なんで太宰君、平気な顔してるんだよ……。
　Aはと云うと、太宰の後ろでしゃがみながら身を守っていた。
　弾丸が脳天を貫通しようと、マキマの交わした契約によってAは生き返る。だが、そんな所を二人に見られてしまうのが嫌だった。

　やがて銃声が聞こえなくなった。
「Aちゃん。もう出てきてもいいよ」
　その言葉に素直に従って、Aはそっと立ち上がった。

＊

　「はははは。なんて贅沢だ。はははははは」
　今、目の前で死体を撃つ男は、Aの知らない太宰治だった。
　Aは何もしていないのに、なんだか酷く疲労を感じていた。ゆっくりとその場に座り込んで、顔を膝に当てがった。
「はは。普通か。はははは」
　太宰は感性が普通ではない。Aは存在自体がこの世界の溢れ者のそれだ。

　「普通に産まれたかった」

二人が居ぬ間に、地獄に招く事が出来るか如何かの実験→←条件付きで、これからも　二

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