《一般人志望》と《マフィアの少年》と《羊の王》 二 ページ25
二人は未だに云い合いをしていたが、Aは気にせず中也に謝る事にした。意図的に怒らせた訳では無かった。だが、彼の立場は二週間前に太宰に何気なく云われた一言で怒りを覚えた自分とよく似ているのだ。
「あの、ええと……」
「あ? 俺か? ……中原中也だ」
少年の名前が判らずに困っているAを察して、中也はサッと名前を告げた。
「AAです。中原君、先程はすみませんでした」
「いや、判ったんならもう構いやしねえよ」
そう云って和解したAと中也を、太宰は面白くなさそうに見ていた。
*
「そうそう、君への用件の話だけど」
太宰が思い出したかの様にそう云った。実の所、全員が完全に頭の隅へと追いやっていた問題だ。
「もう一度聞こうと思って。──二週間前、君があの標的に何をしたのか」
太宰は笑みを浮かべながらAを見つめる。Aもじっと見つめ返した。
「それ、もう解決したはずでは?」
「うん。それでも僕が部屋を出ていたのはたったの二、三分程度だし、その間に蹴られていたにしては顔色も良かった。何処かを痛がる様子もなかったからね」
中也は二人の話を聞いて首を傾げていた。だがAは、太宰が話している二週間前の話も、彼が本当にAに問いたい内容も理解できてしまった。
つまり、彼はこう云いたいのだ。「君、異能力者じゃないの?」と。太宰は、Aが何らかの異能力を使用してあの男を順々にしたのでは、と考えているのだ。
太宰がその言葉を云う前に、Aが口を開いた。
「太宰君。私は君達の様に異能力を保持してはいません」
「へえ、そう。判った、それは百歩譲って信じてあげる」
太宰は冷たい視線をAに向け、中也も心なしかAを警戒していた。Aは自分が失言した事に未だ気づかない。
「ところでAちゃん。僕、自分が異能力者だなんて云ってないけど」
…………やっべー、まずったわ。
*
Aは考えた。そして思いついた言い訳をつらつらと並べた。
「太宰君はポートマフィアの首領である方と何やら親しげな様子だったので。大きな組織の首領に親しげにできるのは、余程の実力者か、異能力者のどちらかだと。中原君の事に関してもです。組織の長、それも《羊の王》と呼ばれるほどですから、余程強い異能力を持っているのかなあ、と」
「……まあ」
「そう云う考えも出来なくは無い、か」
二人は、渋々と云った様に納得した。
条件付きで、これからも 一→←《一般人志望》と《マフィアの少年》と《羊の王》 一
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息抜き(プロフ) - 黒猫さん» 結果主人公の心情優先で書いて、場面を飛ばし飛ばしにしてた箇所もあったのですが、上手く伝わっていた様で良かったです……。続編も更新頑張りますね! コメント有難う御座いました! (2022年12月25日 23時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 初めてのコメント失礼します!読みました!すごく面白かったです。文ストを見ていてチェンソーマンは少ししか見てないのですが、それでも場面の情景が鮮明に想像できました。毎日読みたいくらいハマりました!十五歳編完結おめでとうございます。更新頑張ってください! (2022年12月25日 21時) (レス) @page50 id: 68362437f9 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 温泉煮卵!さん» 有難う御座います! 十六歳編、色々と準備してる段階なので気長にお待ちください……。 (2022年12月25日 10時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
温泉煮卵!(プロフ) - 十五歳編完結おめでとうございます、十六歳編の更新も待ってます!蘇生のシーンとか、特に楽しみです…! (2022年12月25日 0時) (レス) id: 61be09a0bb (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - えむさん» コメント有難う御座います! 頑張りますね! (2022年12月6日 2時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:息抜き | 作成日時:2022年11月3日 3時