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幼少の頃 一 ページ3

Aが迎え入れられた家には、彼女以外にも夫婦の実の子供である娘と、Aと同じく孤児院から引き取られた男がいた。
 義姉の方は病弱な様で、よく床に伏せているのを見かけたが、元気のある日はAを誘って散歩に行く。義両親たちと同じ様に、実の家族の様に接してくれているのだ。
 義兄の方はよく判らない。しかし、義父の財布から金を盗み取っている所を稀に見かけるので、Aはどちらかというとあまりいい印象は持っていない。

 そんなこんなで、Aは一般的な幸せを享受していた。



 事件が起きたのはAが引き取られて数ヶ月経った日のこと。
 その日は義姉の体調が良かった様で彼女から散歩に誘われたが、Aは宿題がいつもより多めに出ていたので断ったのだ。
「ついでに何か買ってきてあげよっか?」
「んー……おやつをお願いできますか?」
 義姉はそれを聞いて、くすくすと笑いながら「いいけど、食べるのはご飯の後だからね。一緒に食べよう」と云って玄関を出た。「いってらっしゃい」と声をかけて、Aは彼女を見送った。
 しまった扉を見て、なんだか嫌な予感がしたのだ。だけど彼女は気にせずに宿題に戻ることにした。
 この時ほど、後々付いていく選択をしなかったのを後悔したことはない。きっとAがいれば、あんなことにはならなかったのだ。



 義姉はいつも散歩をしている道の途中で、血に塗れて死亡しているのが見つかった。彼女の持つ袋には、後々Aと食べようと思って買ったであろうお菓子が入っていた。

 彼女を殺したのは義兄だった。
「なんでだ! なんで殺した! 何が不満だったんだ!」
 普段は怒鳴らない義父が、電話口で義兄に怒鳴った。そばでは義母が泣きながら肩を震わせていた。
『別に不満なんか無かったよ。でも、ポートマフィアに加入しようと思ったら“ガキのお前に人が殺せんのかよ”って馬鹿にされてさぁ。俺でも役に立つんだって証明のために、ちょうど良かったんだよ』
 それっきり、義兄は電話を切って失踪した。義父はもう繋がらない電話を手にしたまま叫んでいた。
「お前なんて……お前なんて家族でもなんでもない!」
 悲痛な叫びだった。その時の光景は、今でもAの脳裏に焼きついている。

幼少の頃 二→←平穏な生活の為に



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息抜き(プロフ) - 黒猫さん» 結果主人公の心情優先で書いて、場面を飛ばし飛ばしにしてた箇所もあったのですが、上手く伝わっていた様で良かったです……。続編も更新頑張りますね! コメント有難う御座いました! (2022年12月25日 23時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 初めてのコメント失礼します!読みました!すごく面白かったです。文ストを見ていてチェンソーマンは少ししか見てないのですが、それでも場面の情景が鮮明に想像できました。毎日読みたいくらいハマりました!十五歳編完結おめでとうございます。更新頑張ってください! (2022年12月25日 21時) (レス) @page50 id: 68362437f9 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 温泉煮卵!さん» 有難う御座います! 十六歳編、色々と準備してる段階なので気長にお待ちください……。 (2022年12月25日 10時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
温泉煮卵!(プロフ) - 十五歳編完結おめでとうございます、十六歳編の更新も待ってます!蘇生のシーンとか、特に楽しみです…! (2022年12月25日 0時) (レス) id: 61be09a0bb (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - えむさん» コメント有難う御座います! 頑張りますね! (2022年12月6日 2時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:息抜き | 作成日時:2022年11月3日 3時

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