検索窓
今日:6 hit、昨日:18 hit、合計:81,677 hit

標的確保 ページ18

Aと太宰は現在、地下室へと続く階段をゆっくりと歩いていた。
 太宰は酔った演技を、今後ろから案内している標的を捕まえるまでは油断させるために続けるつもりだ。そんなものだから、未だにフラフラと覚束ない足取りで、Aに手を引かれながら歩いている。

 ふと、例の地下室への扉が彼の目に映った。太宰はAの肩を引き寄せて、彼女の耳元へと口を近づける。
「Aちゃん。念の為に、僕が合図したら部屋の奥まで走って」
 Aは小さな声で呟かれたその言葉をしっかりと聞き取り、太宰にしか判らない程度に首肯した。

 扉が標的によって開かれる。薄暗くて、気味の悪い部屋だ。中に足を踏み入れると、背後で扉に鍵を掛ける音がした。それと同時に、太宰がAの背中を押す。Aは部屋の奥へと走る。
 ふと気になって後ろを振り返ると、標的が太宰に殴り掛かろうとしているところだった。
 しかし太宰はそんな事はお見通しとでも云う様に、予備動作の一つもなく華麗に避ける。そのまま男の背後に回ると近くにあった棚から酒瓶を手に持ち、男の後頭部を思いっきり殴りつけた。
 酒瓶が割れ、中から液体がビシャビシャとこぼれ落ちる音と、男の倒れる音がした。

 「あー、重い。重いなぁ」
 太宰はそう云いながら男を引き摺って、中央に聳える大きめの柱の元へと運ぶ。そして何処からともなく取り出した縄で、男の胴体を柱に縛り付けた。
「手伝ってくれてもよかったじゃあないか。この男、とっても重かったのだよ?」
 太宰治は柱の向こう側で呆然と此方を見ているAを見つけると、文句を云いつけた。だがそんな言葉、Aの耳には入ってはこなかった。

 随分とあっさり捕まえたなぁ。と云うか、この男が情報を吐こうとしなかったら、目の前で拷問が始まるのか……。
 Aは顔を強張らせながら、太宰の元へと歩いて行った。

命令→←偽の恋人とお酒と酔い(尚、演技である) 二



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (152 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
248人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

息抜き(プロフ) - 黒猫さん» 結果主人公の心情優先で書いて、場面を飛ばし飛ばしにしてた箇所もあったのですが、上手く伝わっていた様で良かったです……。続編も更新頑張りますね! コメント有難う御座いました! (2022年12月25日 23時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 初めてのコメント失礼します!読みました!すごく面白かったです。文ストを見ていてチェンソーマンは少ししか見てないのですが、それでも場面の情景が鮮明に想像できました。毎日読みたいくらいハマりました!十五歳編完結おめでとうございます。更新頑張ってください! (2022年12月25日 21時) (レス) @page50 id: 68362437f9 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 温泉煮卵!さん» 有難う御座います! 十六歳編、色々と準備してる段階なので気長にお待ちください……。 (2022年12月25日 10時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
温泉煮卵!(プロフ) - 十五歳編完結おめでとうございます、十六歳編の更新も待ってます!蘇生のシーンとか、特に楽しみです…! (2022年12月25日 0時) (レス) id: 61be09a0bb (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - えむさん» コメント有難う御座います! 頑張りますね! (2022年12月6日 2時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:息抜き | 作成日時:2022年11月3日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。