#2 ページ17
「でもさっとんも復帰戦だし、私ばかりってわけではなかったと思うんですが」
「そりゃな？ そりゃ宮原様だって全日本女王ですし？ 復帰ってとこは大ニュースだがな？」
だがしかし、とコーチの落語家のような、大袈裟に身振り手振りで話し続ける様子にさっとんは失笑した。
「さっとんやめて。これで笑ったらコーチが調子乗っちゃう」
「いや、神谷さんのこの感じ久々に見たなあって」
「うん。多分前以上にうるさいかも。付き合ってくれてありがと」
「いえいえー」
気の抜けたさっとんとのやりとりに、コーチが割って入る。
「しかし、な。記者からしたら“今大会での目標”を聞いて、“宮原選手のショートとフリーを観ること”って返ってくるスケーターは逃したくない、と絶対思うぞ」
コーチの言葉にさっとんも頷く。
「それで宮原さんもよう、コソッと“そういえばまだ観てないもんな？”とかそこの話を広げようとするからなあ」
あれで完全に会見ならではの真面目な雰囲気は消えたな、とコーチ。
「知子は笑えたけど、他の人達からしたらハテナやろ」
「そうなのかな」
さっとんのプログラム観れてないし、頑張りますとかって他の人も言ってた気がするから被らない方がいいのかなあって思ったのだけれど。
「実際そこからだったやん。Aに質問が集中したの」
「そうかも、うん」
そこからさっとんとの関係性だったり、オリンピックシーズンにデビューすることになった心境だったりを聞かれたのは確かだ。
「まあ結果的には記者たちのネタにもなったし、よかったんじゃねえか？」
ネタになるっていい事なのかなあ。
質問に答えた後に笑いが起こると、何かおかしなことを口走っていないか不安にはなるのだが。
何となく、真面目でしっかりしたイメージを記者の方には持ってもらいたかったなと思った。
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作者名：たこやき | 作成日時：2023年3月11日 12時
