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【番外篇】兄弟子 3 ページ27

『ごめんなさい…』


『貴方が護ってくれたおかげで私達の生活があったのに
私…なにも知らなかった』



この人はきっと、悲しみではなく
己で決めた信念を貫けなかった悔しさと後悔をひた隠し
もう一人の師の傍で奈落の首領をしていたのだろう。



先生を護るために先生の傍から離れ
誰も知らないところで松下村塾での幸せを護った。


このことは最期まで誰も知られず人生を終えたのだろうか


知らずのうちに終わる蚊取り線香のように
誰にも見られず落ちていく秋の葉のように
気づかぬうちに溶けていく雪のように

兄弟子は静かにその生涯を閉じ、私達の幸せを護ってくれていたのだろうか。

感謝、という気持ちでは足りない。

彼の気持ちを考えれば考えるほど涙が溢れて止まらない


「そんなに泣くな」

涙を拭う朧さんは泣き虫な子供をなだめる兄のようだった。

「この感情は妹というやつに抱くものなのだろうな」


頭を優しくなでてくれる朧兄さまの手は
幼いころ同じようにしてくれた松陽先生と同じで
この人も私達と変わらない、吉田松陽の弟子なんだと感じる。



「やっと来てくれたんですね、朧

お茶を入れましたよ」


村塾の中で作業をしていた先生が来客に気づきお茶を持ってきてくれた。
その表情はとても嬉しそうで、すべてを包む緑の瞳で私達を見つめた。


「今まで一緒にいれなかった分、これからはたくさん話をしましょう。
貴方の妹弟子と一緒に。」

顔を隠すように俯き、震えながら涙を流す朧からは
はい、と確かに聞こえた。




なりたかったものになれなかったとしても

これからなりにいこう。

命が枯れても

ここにはその先が待っているから

ここでやり直せるから

叶えたかったことはここでできる。絶対に。





強く想う気持ちに応えるように庭にはアンモビウムの花が咲き誇っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「もしやり直せるなら俺はお前たちになりたかった」

朧様のこの最期の言葉を思い出すために泣いてしまう作者の気持ち整理のエピソードでした。
楽しんでいただけたら幸いです。

銀さん達は信念を貫く侍ですが、貫けずに自らの在りどころを見失ってしまう人もいると
相反させたキャラクターが朧様だと思っています。

そんな朧様は諦めの人生だったのではないかと彼の一つひとつの言葉を見ていて感じてしまいます。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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設定タグ:銀魂 , 高杉晋助 , 死ネタ   
作品ジャンル:アニメ
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ポテト(プロフ) - とても素晴らしい作品でした。作っていただきありがとうございます。 (2022年8月2日 1時) (レス) @page35 id: becea61854 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - みーこさん» 中学生はとても感情が複雑でそれに受験が重なると苦しいことが多いかもしれませんがあまり気負わずご自身が出せる力を出して自分に合った場所を探せるといいなと思います。疲れたらいつでもひまわりの彼女に会いにきてくださいね! (2020年11月2日 0時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - みーこさん» たくさんの作品にたくさん感動していた側の自分が新しく作品を作りあの頃の私のように感動してくださる方がいらっしゃるのはとても感慨深いです。 (2020年11月2日 0時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - みーこさん» 愛情こもったコメントありがとうございます。嬉しすぎて泣いてしまいました。私もみーこさんのように読み漁っていた時期があり一通り読んだ後にもっとあんな設定でこんな文章の作品が読みたいと考えるようになったのがこの小説の執筆を始めたきっかけです。 (2020年11月2日 0時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ - やっぱり素晴らしいですね。花言葉のエモさを理解したし、色んなことを教わった作品。ボロ泣きした夢小説は少ないんですけど、そのひとつでした。今どうかはわかりませんが、この作品は永遠に不滅だと思ってます。銀魂が終わってもまた、訪れさせていただきます。 (2020年10月28日 21時) (レス) id: 322bb6492e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年8月14日 23時

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