ずっと ページ10
…今朝は、彼の姿を私は確かに見た。というのも、今日も彼のことを叩き起こしたのは私であり、不機嫌面をしっかりと向けられていた。だから一応、朝までは居たのだ。そして、「今日こそ仕事をして貰おう」として部屋に二人で居たのだが、私が厠に少しの間部屋を出ていたのを見計らってか、沖田隊長は姿を眩ませていた。
…部屋に戻ったときには、もう遅く。
「それからずっと一人で仕事してました」
「……そうか、なんか……悪いな」
謝られてしまった。悪いのは100%沖田隊長で副長は何も悪くないと言うのに。私は慌てて「いえいえ」と両手を振る。それに、もうこんなのはいつものことなのだ。今更キレたりも困惑したりもしなかった。「あぁ、やられたな」と思っただけだった。
「……仕事も多分、嫌なんでしょうけど。多分隊長は、私と居るのが嫌なんですよ、きっと」
「…それは…、」
「気遣って頂かなくて結構ですよ。副長」
……沖田隊長は私のことが嫌いなのだ。同じ空間に、居たくない位には。だから、私を一番隊から抜けさせれば、いいだけの話なのだけれど。どうにもそういう訳にはいかないのか、それは未だに実践されずにいた。
「……私が、ダメなんですよ」
「……、」
……ずっと。隊長はずっとそうだった。初めて会った時から、私を毛嫌いしているように見えた。
*
……遡ること数ヵ月前。まだ冬真っ只中だっただろうか。肌を刺すような寒さが大気に満ちていて、江戸と街の人々はマフラーに手袋、コートを着て完全防備をしていた。私も寒さ対策として暖かいものを身に付けていた。
「は〜……緊張してきた…」
そう口にすると、息が白くなって溶けるように消えていった。まるで、一瞬だけ言葉が形を成したかのようだった。
寒さに震える江戸の街を歩くこと数十分。目の前に聳える建物に、私は思わず「おー…」と感嘆の声のようなものを漏らしていた。
「…やっぱり大きいなぁ…」
『武装警察真選組』の立派な表札を確認してから、そのすぐ隣にある看板を見る。『新人隊士面接実施中』という文字が記されており、緊張が高まる。
「……よしっ」
私は拳を握りしめ、そう気合い入れに呟くと、大きな歩幅で屯所内へと足を踏み入れたのだ。
……ここを、私の居場所にするために。
……私はきっと、いや絶対に、警察になるのだ。
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ゆきふく(プロフ) - 好きすぎて2週目に入りました。またお世話になります。笑 (2月9日 15時) (レス) id: c898271006 (このIDを非表示/違反報告)
雨散 - ああああああああああああああああ (2019年8月5日 14時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - 私は沖田さんになんてことを........ (2019年3月29日 15時) (レス) id: 544b2fa555 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ちあきさん» ちあきさん!ありがとうございます!!返信が遅れてごめんなさい!!一巻の沖田さんはツンデレが大きく出てますね(笑)甘々な沖田さんがこれから出てくるかと思われるので、甘い彼もご堪能くだされば幸いです!!お楽しみくだされば嬉しいです!! (2018年6月1日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - 沖田くんのツンデレええですね(笑) (2018年5月12日 22時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年9月11日 17時