今から 沖田side ページ47
…姉上以外の、他の女をこんなに大事だと思うのは初めてで、どうしていいかも分からないままに、傷付けて傷付けて、それでもAは泣かなかった。「隊長にはデリカシーというものが欠落していると私は思います!!」とキレられることは多々あったものの、涙を流すことは一度もなかった。
…だがその時、Aは泣いていた。
背中を向けたままだったから、その面は見ていないが、声がもう泣いていた。悔しそうに、苦しそうに声を出して、「そんな人だとは思わなかった」と。その泣き声は、俺の耳にこびりついて離れてくれない。
『お前はもうちっと、素直になったらどうだ』
…土方の言葉が、脳内で再生されて、それにまた苛立って、Aを泣かせた俺自身に苛立って、どうしようもなかった。
…本当は大事にしたくて、大切にしたくて。
言いたいことをすべて飲み込んで、冷徹な言葉を繕って吐いて、傷付けて、もう遅いのかもしれないけれど、それでも、そう出来たならと、強く思った。そうしたなら、少しはアイツは、俺を見てくれるだろうか、と。
…Aが浪士共に囲まれているのを見て、ほとんど衝動的に駆け付けていた。連中を片付けた後、そのまま、ぽかんと俺を見据えているAを、抱きしめてしまいたかった。本心ではずっと、そう思っていた。
…言いたいこともしたいことも思うように出来なくて、もどかしさを感じて。
…やるせなさを感じていれば、Aは言う。
「…私のこと、嫌い、ですよね?」
…俺がそういう態度を取って、そう思わせた。
それなのに、自分勝手に程があると思うけれど。その言葉に、俺はどういう訳か酷くショックを受けていた。
…ちっとは素直に、か。と、俺は心の中で難い野郎の言葉を反芻した。
……逆に、その瞬間に吹っ切れた気がした。
いっそ嫌われようとしたって、どうしたって本心は捨てきれなくて、どうにかして繋ぎ止めておきたくて、嘘で塗り固めた言葉を吐いて傷付けるのなら、そのたびに、俺自身も苦しむことになるのなら、だったら、
…言ってやろうかと。
…隠していたって、何もいいことなんざないことは、もう分かったから。
だから、俺は我慢することをやめた。
「ーーッ」
…ずっとしたかった、ずっと触れたかった。塞き止めていた想いをすべて、触れた唇から伝えてしまいたくて、それでも伝わりきらなくて。
「…俺ァお前のこと、嫌いだなんざ思ったことねェよ」
……今からでもまだ、間に合うだろうか。
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ゆきふく(プロフ) - 好きすぎて2週目に入りました。またお世話になります。笑 (2月9日 15時) (レス) id: c898271006 (このIDを非表示/違反報告)
雨散 - ああああああああああああああああ (2019年8月5日 14時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - 私は沖田さんになんてことを........ (2019年3月29日 15時) (レス) id: 544b2fa555 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ちあきさん» ちあきさん!ありがとうございます!!返信が遅れてごめんなさい!!一巻の沖田さんはツンデレが大きく出てますね(笑)甘々な沖田さんがこれから出てくるかと思われるので、甘い彼もご堪能くだされば幸いです!!お楽しみくだされば嬉しいです!! (2018年6月1日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - 沖田くんのツンデレええですね(笑) (2018年5月12日 22時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年9月11日 17時