承知の上 沖田side ページ44
…それからというもの、俺は暇さえあればその女のことを考えていた。サボりを遂行中の時も、土方暗殺計画を練っている最中にも、眠る前にも朝起きて土方の部屋にバスーカをぶっぱなす時も。頭からソイツのことが離れなくて、嫌でも『特別』を思い知らされたのだ。
…たった一度きり。それもほんの数分程度しか話してもいないってーのに、バカみたいな話だけれど。それでも、惚れてしまったものは仕方ない。
…もう一度、どうにかして会えねぇもんかと。そう思い俺は雨宿りをした屋根の下を度々訪れた。ソイツに手渡された……いや、ソイツが置いてった傘を持って。これを返すために待っていたんだということを理由にしてしまえばこっちのもんだと思った。我ながら頭の悪い考えだ。だが、そう思いようにはいかず、その女に再会できないまま、時間は過ぎていき。
…そうして、『真選組新人隊士募集面接』当日。特にやる気も何もなく、どうやって新人をしごき回してやろうかと俺は一人考えていた。女が置いてった傘は、俺の部屋にしまったままだった。
…きっともう、それを返すことは叶わないのかもしれないと。そう思い始めていた。だが、その時は唐突に、突然に訪れた。
「日下部Aと申します…!」
…女はあろうことか、新人隊士志望として現れたのである。その時の俺の衝撃は凄まじいものだった。無理もない。色んな意味で少し衝撃的すぎた。思わず口をあんぐりと開けてしまうくらいには。
…傘を返すチャンスが漸く来たか、と。そう思ったのも束の間。
…近藤さんと土方さんがその女と話している内容が聞こえてくる。
どうやら女は、どういう訳か松平のとっつぁんと知り合いらしく、とっつぁんに紹介されてここに来たと言う。その上剣技もそれなりにあると女は自分で口にした。近藤さんも土方さんも、とっつぁんの知り合いということもあり、女を隊士として採用しようとしていた。
…ダメだ、と、俺は思う。
『気をつけて帰ってくだいねー!!』
…ここは、明らかにコイツの居場所ではない。血の臭いが漂うような場所に、この女を放り込んではいけない。雨に濡らしてはいけないと思うように自然に、そう思った。何より、
…俺がその女に、ここに居させるべきではないと思ったのだ。
……だから、言った。
「俺は反対ですぜ、こんなチンチクリン」
…嫌われるのも、キレられるのも承知の上で、俺は女にそう言い放ったのだ。
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ゆきふく(プロフ) - 好きすぎて2週目に入りました。またお世話になります。笑 (2月9日 15時) (レス) id: c898271006 (このIDを非表示/違反報告)
雨散 - ああああああああああああああああ (2019年8月5日 14時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - 私は沖田さんになんてことを........ (2019年3月29日 15時) (レス) id: 544b2fa555 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ちあきさん» ちあきさん!ありがとうございます!!返信が遅れてごめんなさい!!一巻の沖田さんはツンデレが大きく出てますね(笑)甘々な沖田さんがこれから出てくるかと思われるので、甘い彼もご堪能くだされば幸いです!!お楽しみくだされば嬉しいです!! (2018年6月1日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - 沖田くんのツンデレええですね(笑) (2018年5月12日 22時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年9月11日 17時