気紛れ ページ38
「…なんで、ここまでして助けてくれたんですか…?」
…とても、素直な疑問だった。
私には理解出来なかった。どうして沖田隊長が、私を助けてくれるのか。どうして沖田隊長が、私を護ってくれたのか。今の今まで起きていた、そして現在進行形で起きているすべての出来事が、理解できない。
…だって、隊長は。
「…別に、ただの気紛れでィ」
理由なんざねェよ、と。隊長は私から視線を逸らし、前を見据えてそう言った。
先程までの、人気のない地区を抜けて、今は人々が行き交う街に出ていた。視線が痛い。「うわぁ、いいなぁ…」みたいな目を向ける人から、「リア充シネ」みたいな目をする人までいる。人々の目が突き刺さる。
…気紛れ、か。
でも、それでも、本当に嫌いな人間を、気紛れで助けてくれるだろうか。道のすみで咲いている花に水をやるような、そんな気紛れで。だってなんてったって沖田隊長だ。隊長が嫌っている相手を気紛れで助けるようなことはしないような気がする。真っ黒い笑みを浮かべて傍観するような気がする。
それなのに、沖田隊長は私を助けてくれた。
……どうして。
「…隊長は、私を、嫌ってますよね…?」
「ー・・あ?」
…隊長は急に足を止めてはそんな声を漏らして、私を見下ろした。何処かポカーンとしているような、隊長にしては珍しい顔で。聞き取れなかったのだろうか。
「…隊長は、私が嫌いですよね?」
「…、」
…あれ、と、私は瞬きをする。
今一瞬、一瞬だけ、沖田隊長の顔が、寂しそうに見えた。彼が今まで私に見せたことがないような、切なそうな表情。瞬きをしたら、もうその時には元通りだったけれど。
立ち止まったまま、無表情で私をただ見据えている隊長に、私は首をかしげる。
「…隊長?」
「…まぁ、そりゃそうか」
「え…?……っと、」
隊長はよく分からない言葉を呟くと、また足を進める。なんだか、さっきより足早な気がするのは、気のせいではないと思う。
…沖田隊長が不機嫌なのも、多分気のせいではないと思う。
「…隊長」
声をかけても、彼はもう私を見てはくれなかった。不思議に思っているうちに、いつの間にか私達は屯所に到着しており。
玄関を進み、隊長はズンズンと廊下を歩いていく。
「…あの、もう下ろしてくれてもいいですよ?」
「うるせェちょっと黙れ」
そんな言葉すら、一蹴されてしまった。
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ゆきふく(プロフ) - 好きすぎて2週目に入りました。またお世話になります。笑 (2月9日 15時) (レス) id: c898271006 (このIDを非表示/違反報告)
雨散 - ああああああああああああああああ (2019年8月5日 14時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - 私は沖田さんになんてことを........ (2019年3月29日 15時) (レス) id: 544b2fa555 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ちあきさん» ちあきさん!ありがとうございます!!返信が遅れてごめんなさい!!一巻の沖田さんはツンデレが大きく出てますね(笑)甘々な沖田さんがこれから出てくるかと思われるので、甘い彼もご堪能くだされば幸いです!!お楽しみくだされば嬉しいです!! (2018年6月1日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - 沖田くんのツンデレええですね(笑) (2018年5月12日 22時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年9月11日 17時