そんなの、 ページ27
Aside
「…もう、何なのよ、あの人」
…なんだってあんなこと言われなきゃならないんだ。
そう思いながらトボトボと足を進めていた。行き急ぐように江戸の歌舞伎町を歩いていく街の人々とすれ違いながら、追い越されながらに歩く。ゆっくりゆっくりと歩いているため、どんどん人に追い抜かれていく。別に勝負をしている訳でもないのに、どうしてか焦るような気持ちになる。
『お前、何しに来たの』
「…ッ、」
…脳裏にその言葉を、沖田隊長の言葉を私は再生させた。いや、再生させてしまう。歩きながら何度も何度も、甦ってくるその言葉。それは私の胸をこれでもかと痛めつけてくる。彼がこの場に居ないのにも関わらず、泣きそうになる。
「…何しに、来たのか…」
…そんなの、決まっているじゃないか。
護りたいものを護るため。
護りたいものを護れるくらいに強くなるため。
…大事な物を全部、護れるくらいに。
…彼等の仲間でありたくて、彼等を護る剣でありたくて。
…だから私は、これまでずっと、真選組のために戦ってきたのに。やましい気持ちも、よこしまな気持ちもなく、下心なんて持っての他で、私なりに一生懸命にやって来たのに、それなのに。
…彼はその気持ちを、努力を、あんなにも簡単な言葉であしらうのか。あんなにも冷たい言葉で蹴るのか。
…そんなの、あんまりじゃないか。
「…沖田隊長なんか、」
…嫌いだ。彼も私を嫌っているのだ。だったら私も、嫌いだ。大嫌いだ。あんな人。
「…っ」
…あぁヤダ、また、泣きそうになる。溢れそうな涙を堪えようと、唇を噛み締め、うつ向かせた顔を上げる。すると。
「…?」
…視界に、何か……何て言うの…世間の闇のようなものが映った。
思わず眉を寄せる。その方向を凝視する。
「お母さん、あの人何してんのー?」
「しっ、見ちゃいけません…!」
「…、」
…視界の先には、自動販売機の下を覗き込み、そのせいで頭が挟まって身動きが取れなくなってしまったらしい、
「ヤベ、…嘘コレ……どーしよ」
……万事屋の旦那が居た。
「…あの、何しているんですか、旦那」
「いや、あのさ……、」
…誰だか分かんないけど、ちょっと助けてくんない?
……溜め息を吐くことも忘れて口元をひきつらせた。
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ゆきふく(プロフ) - 好きすぎて2週目に入りました。またお世話になります。笑 (2月9日 15時) (レス) id: c898271006 (このIDを非表示/違反報告)
雨散 - ああああああああああああああああ (2019年8月5日 14時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - 私は沖田さんになんてことを........ (2019年3月29日 15時) (レス) id: 544b2fa555 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ちあきさん» ちあきさん!ありがとうございます!!返信が遅れてごめんなさい!!一巻の沖田さんはツンデレが大きく出てますね(笑)甘々な沖田さんがこれから出てくるかと思われるので、甘い彼もご堪能くだされば幸いです!!お楽しみくだされば嬉しいです!! (2018年6月1日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - 沖田くんのツンデレええですね(笑) (2018年5月12日 22時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年9月11日 17時