自分で ページ17
私がするべき覚悟とはきっと、『死ぬ覚悟』と『生き抜く覚悟』だ。私なりに考えて考えて考え抜いて、出した答えがその二つ。私はその覚悟を胸に、今ここに立っている。真選組屯所の門を潜り、その場所の砂利を今踏んでいるのだ。
…その覚悟を、未だに出来ていなかったのだとしたら、
…私はここには居ない。
「…正気か、お前」
「正気です」
私は正常だ。気が狂っている訳でも、パニクっている訳でもない。私は私の意思でここに居て、自分の意思で言葉を発しているのだ。眉を潜めて私を見据えるその目を、真っ直ぐに見つめ返して私は、一歩を大きく踏み出してその銀色に近づいた。
「…!」
「…一応言っておきますけど、私に帰る意思はありません」
…私はここから動かない。
…逃げるつもりはない。
「…このまま俺がテメーの首斬るとしても、か…?」
「オ、オイ…!」
「お好きにどうぞ」
近藤さんの制止の言葉すら私は遮って、そう口にした。震える口を引き結んで、口角を吊り上げる。少しでも不敵に見えていることを願うけれど、きっと震えているだろう。強がりをただ歪に貼り付けただけの、弱々しい笑みになってしまっていることだろう。情けない話だけれど。
「…私は選んでここに来ました。その結果としてそうなったとしても、後悔はしません」
…自分で決めた道だ。自分が望んだ場所だ。
自分の心で決めて、自分の意思で覚悟を決めて、自分の足で、ここに立っている。
…それを、誰かの言葉で、誰かの行動で、曲げたくはないのだ。
「…」
「…」
…暫くの沈黙。そして、
「…!」
茶髪の彼は、私に向けていた刀を下ろすと、シャッ、という鋭い音を再びたてては鞘の中に戻した。そうして何も言わずに背中を向けて、この場を去って行ってしまった。
「…え、」
「はぁ……アイツ…」
呆気に取られたように呆然とその背中を見送っていれば、土方さんは溜め息をついて頭をわしわしと乱した。
「悪かったな。うちの総悟が…」
「い、いえ…」
近藤さんは苦笑いを浮かべて頭を軽く下げた。ドクン、ドクン、という心臓の音が、今更になって聞こえてくる。
「……まぁ、その、なんだ…、こんなことになっちまったが、…俺達と共に戦ってみねェか…?」
…これで嫌だと言われても仕方ないとでも言うような表情だ。そんな生半可な覚悟で、私はここに居ないのに。
「よろしくお願いします!」
大きく頭を下げて、私はそう言った。
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ゆきふく(プロフ) - 好きすぎて2週目に入りました。またお世話になります。笑 (2月9日 15時) (レス) id: c898271006 (このIDを非表示/違反報告)
雨散 - ああああああああああああああああ (2019年8月5日 14時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - 私は沖田さんになんてことを........ (2019年3月29日 15時) (レス) id: 544b2fa555 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ちあきさん» ちあきさん!ありがとうございます!!返信が遅れてごめんなさい!!一巻の沖田さんはツンデレが大きく出てますね(笑)甘々な沖田さんがこれから出てくるかと思われるので、甘い彼もご堪能くだされば幸いです!!お楽しみくだされば嬉しいです!! (2018年6月1日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - 沖田くんのツンデレええですね(笑) (2018年5月12日 22時) (レス) id: 3135ea492c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年9月11日 17時