▼妬み嫉みの矛先 ページ10
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「外周あと三周──…って凪、お前」
「もう疲れた一歩も歩けなーい」
「ったく。スポドリ持ってくるから待ってろ」
『いやそれ私の役目な』
凪くんがサッカー部に入部して早一週間。うちの部を含め新入生をホイホイと勧誘する中で、二年生が新しく入部するのは割と稀であった。そのため注目されていたのだが…その一週間で二人は期待以上、いや圧倒的な実力を見せつけ、入部早々にしてレギュラーを勝ち取った。
その落胆で高総体を前にして辞めた先輩や同級生が数人いる。そりゃあ弱小とはいえ今まで努力してきたものをポッと出のヤツらに崩されたのだ。これ以上頑張るなんて虚しいだけだろう。
藤原先輩は少し寂しげな顔をしていたが、私は薄情なのか特に何も思う事はなかった。確かに同情はするが、部活を辞めたのが玲王と凪くんのせいだとは思わない。むしろこれから二人がどこまで上り詰めていくのかワクワクしている自分がいる。
…まあ、普段の練習の様子だけ見れば、凪くんにやる気は感じられないのだが。しかし試合となれば玲王が指示さえ仰げば彼はそれに応じるし、結果はちゃんと残す。そこがやはり天才だなあとぼんやりと思った。
『…思うんだけど玲王は凪くんに甘々だね』
「おう。だって凪は練習なんてしなくても試合ではちゃんと勝つからな。変に無理強いしてやる気削ぐよりかはいいだろ」
『まあそうだけどさあ…』
チラリと後ろに目をやる。聡い彼は気づいたようだ、凪を見つめる妬み嫉み目線に。最初こそは玲王の圧倒たる権力に目が眩んで一生懸命頑張っていたものの、突如レギュラーを取られ、これまで部活を共にしてきた先輩や同級生を失ったのだ。彼の実力があってこその事だとしても、やはり鬱憤の矛先は彼にしか向かないのだろう。
「あんなヤツらほっとけ。凪はどうせ気にしてないし、そのうちアイツらも認めざる負えなくなる」
『…きっしょ、ベタ惚れじゃん』
「悪いかよ。それとも嫉妬?」
『バカ言え』
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余談だがしばらくして玲王の言った事は的中した。凪くんの圧倒的才能と実力に段々妬み嫉みも薄れていき、部員たちも認めざる負えない状況になった。…その時にはもう白宝高校のサッカー部は弱小と言われなくなるのだが、それはまた後の話。
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雪菜(プロフ) - Kyoro丸。さん» !!!!めちゃくちゃ嬉しいです〜!!続編行きそうなのでこれからも頑張ります!!ありがとうございます☺︎☺︎☺︎ (2023年4月7日 16時) (レス) id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
Kyoro丸。(プロフ) - いや、これは殿堂入りしなければならない作品でしょ!めっちゃタイプです!これからも頑張ってください〜! (2023年4月7日 14時) (レス) @page10 id: ea6fdef67d (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - みっちゃんさん» うわあああ嬉しいです!!春休みなのでちょくちょく更新していきます!ありがとうございます〜〜〜!!! (2023年4月7日 12時) (レス) id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - もうどタイプすぎて時間を忘れて一気見してましたwww. 新しい更新まってまーーーす!!!!!!! (2023年4月7日 12時) (レス) @page33 id: 49aaf38551 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - さえさん» 本当ですか…!!!!めちゃくちゃ嬉しいです!!!動悸がすごいです!!ありがとうございます〜!!!☺︎☺︎☺︎ (2023年4月3日 0時) (レス) id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪菜 | 作成日時:2023年3月7日 21時