立つ鳥跡を残さずⅢ【wr/wr/d】 (ページ2)

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少しの間、3人だけにしてくれませんか。
Aの弱々しい声を聞いて、しんぺいさんは深く頷く。そして、ゆったりとした動作でここを後にした。

今、ここには3人しかいない。
3人のはずなのに、2人分の呼吸音だけが虚しく響く。

｢ごめん｣

気付けば、声に出してそう呟いていた。
それを聞き取ったらしいAが、返事をするように、さらに深く顔を伏せた。

｢……私こそ、ごめん｣

絞り出したようなAの声は、震えていた。

｢思い出したの。全部。貴方のことも、アラタ……シンのことも｣
｢そっか｣
｢私のせいで、シンは死んじゃったのかな｣
｢……違う｣
｢私がもっと早く起きて、もっと早く気付いていれば、シンは死ななかったかもしれない｣
｢違う｣
｢私が、もっと早く、しんぺいさんを呼べていれば｣
｢違う！｣

俺が大声を上げたからか、Aは肩をビクッと震わせた。Aは、今にも泣きそうな顔でこちらを見た。
罪悪感からか、胸がチクリと痛む。

｢ごめん、大声出して。でもな──｣

それでも、Aに話さなければいけない。分かってもらわなければいけないことなのだ。

｢──ちゃうねん。あいつは、シンは、お前にそんな……そんなこと思ってほしかったんやない｣

Aの目を見つめ返すことはできなかった。もしそうしたら、俺の方が泣き出してしまいそうだった。
だから、ひたすら、もう自分の意思で笑うことのないシンの顔を見つめた。

｢このことを話すには、そうやな……Aを逃がしたすぐ後まで、遡って話さなきゃあかんな｣

緊張からか、Aが息を飲んだ音が聞こえた。

｢シンは、お前を逃がしてから、変わってしまったんや。まあ、変わったと言っても、本質的には何も変わっとらんかったけど｣

そう、これは、何故あいつが変わってしまったのか。あいつが何を思い、こうなってしまったのか。
昔の俺達の話と、今の俺の独白や。