本当のこと ページ15
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「…どうしたの？」
「揺れんだろうが，座れよ」
「もしかして……怖い？」
「……」
観覧車はようやく1/4を過ぎたくらいで
頂上まではまだあるのに怖いなんて…笑いたきゃ笑えよ
「ごめんね」
言いながらゆっくりと座り直すA
「あ？」
「観覧車乗りたいなんて言って」
「いや，いいけど……それより何がごめん？」
「あ，……あのね？
私，実は仕事やめたの」
「…はぁ？」
「夏休みって嘘なの。もうイギリスにも戻らない」
「え，だって……うちの母親，そんなこと…」
「おばさんがね，長居するって言ったら翔くんが渋るだろうから，夏休みだって言っておきなさいって」
「……あんにゃろ…」
そりゃあホテルなんか取らない筈だよ
「ごめんなさい！
落ち着いたらちゃんと家も仕事も探すから」
「いや，まぁ…良いんだけどさ？」
「迷惑かけてるのはわかってる。
久しぶりに会ったのに甘えててごめん…
すぐに出てくから，だから後少しだけ…」
「だから別に良いってば。
ま，最初からホントのこと言っといてくれりゃあな，とは思うけど？」
「そうだよね…」
深く項垂れてるAを見てたら，
それ以上強く言えねーじゃんて思う
結局昔っから俺はこいつに甘くって
それを母親にも見抜かれてたって訳だ
「ま，住むとこぐらい早く探せよ？」
「うん」
「うら若い女子がだよ？
いつまでも独身男の家にいる訳にいかねーだろ」
「男の家って」
「違う？」
「違くないけど…翔くんちだもん」
口を尖らせるAに，俺は小さくため息をつく
衝撃的な話に驚いているうちに
いつのまにか俺らの乗る箱は地上へと戻ってきて
なんで仕事を辞めたのか？とか
聞きたいことはまだ色々あったけど
扉が開いてしまったから仕方なく外に降りた
続いて降りようとするAに無意識に手を伸ばすと
Aそれを躊躇いもなく掴むものだから
なんとなく手をほどくタイミングを逸して
そのまま2人，黙って車まで歩いた
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