No.4 狐な神（一応）は狩りに向かう【ワールドトリガー】

百五十七匹目 ページ11

「おー、風花もいたのか」

「遊真」



グッと遊真の方へ腕を伸ばすと迅が俺を放し、それを遊真が抱きとめた。

頬をすり寄せ甘える。



「お疲れ様」

「見てるだけとは、風花も意外と人が悪いね」

「うふふー」



スルッと遊真の腕から抜け出し、背中にしがみ付く。

今度は遊真の肩のあたりから頬を摺り寄せた。



「損か得かなど関係ない……！

近界民(ネイバー)はすべて敵だ！！！


緊急脱出(ベイルアウト)！！」



目を細めて遊真の頬に自分の頬を夢中ですり寄せ甘えていると、何かを嘆くような声音が聞こえた。

次の瞬間には緑色の光がボーダー本部の方へ飛んで行った。


何となく、飛んで行った彼が気になり暫く飛んで行ったその先を眺めていた。



「うおっ、飛んだ」

「……緊急脱出(ベイルアウト)。

ボーダーの正隊員のトリガーはトリオン体が破壊されると自動的に基地へ送還されるようになっている」

「負けても逃げられるしくみか。

便利だなー」



少しの間 遊真も俺と同じ方を見ていた。



「あー負けた負けたー！

しかも手加減されてたとか、もー」



声がした。

その方を見るとカチューシャをした学ランの少年。

彼はぐでーっと後ろに倒れこみ言う。



「さあ好きにしろ！

殺そうとしたんだ。

殺されても文句は言えねー」

「べつにいいよ。

あんたじゃ たぶん おれは殺せないし」

「マジか！

それはそれでショック！」



ストン、と遊真の肩から降りる。

正直、このままここにいても暇だ！



「――っと、その前に」



その場から立ち去ろうと進めていた足を止め振り返った先に”彼”を捕らえる。



「三雲 修クン」




――――陽の下にて、白銀が揺れた。

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