49.私はもう ページ1
乃木｢お前…｣
｢間に合って良かった…時間が無い。
神様、おねーさんに証を｣
乃木｢証…？｣
｢お兄ちゃんとおねーさんが交わした証を、奪って｣
あいつらが交わした証って…
｢…婚約の、証｣
乃木｢………は？！｣
婚約という言葉に反応し、顔の熱がどんどん上がってくる。
付き合ってもねーのに婚約って…！
｢じゃないと、おねーさん…取られちゃう…！｣
悲しそうな顔をする幽霊に、俺はハッとした。
そりゃAのことは好きだし取られたくねーけど…だからって…こ、婚約〜…？
｢神様、自分の気持ちを伝えて…！おねーさんを取り返して！｣
必死な顔をする幽霊に胸が締め付けられた。
俺も、こいつも、ロッティも、ユイちゃんも…オカルト倶楽部のあいつらだってみんなAを必要としてる。
乃木｢…わーってるって。
俺が…神様がぜってー助けてやるから｣
俺は幽霊を安心させるため、笑って頭を撫でた。
｢…うん、…うん…！
ありがとう、神様…。｣
幽霊は、涙を流し笑っていた。
｢…頑張ってね｣
そう言って消えたあと、風を切る音が横から聞こえてきた。
竜｢…あれ、いつの間に逃げた？
違う。これは、あぁ…そう。あいつ…生きてたのか｣
竜はナイフを見つめながらぶつぶつと何かを言っている。
俺が鉄パイプを持ってふらつく足でその場に立つと、また目の前にゾンビが数体程湧いてきた。
竜｢やっぱ、苦しんで死ね｣
乃木｢生憎、ここで死ぬつもりは一切ねーんだよな｣
俺はもう一度強く鉄パイプを握りしめた。
ーーー
私はテレビを見終えてから廊下に繋がる扉を開けた。
ふと左側が騒がしいなと思い目を向けると、そこには幽霊に囲まれているロッティとユイちゃんの姿があった。
ユイ｢あ…！Aちゃん！！｣
目が合うとユイちゃんはすぐに私の名前を呼んだ。
でも、ごめんね。
ロッティ｢…A？｣
私は幽霊たちに近付き、"もういいよ"と伝えると幽霊たちはすぐに消えた。
何故自分たちを襲ってきた幽霊が私の言う事を聞いたのか理解出来ていない2人は、私のことを無言で見つめた。
A｢…ロッティ、ユイちゃん、ありがとう
乃木もすぐに行くから、先に帰ってて？｣
私がそう言うと、2人は目を見開いた。
ユイ｢Aちゃんは…？乃木さんと一緒に帰ってこないの…？！｣
ごめん。ユイちゃん。
ロッティ｢A…一体何があった…？｣
ごめん。ロッティ。
私はもう、一緒に居れないや。
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作者名：霊来 | 作成日時：2023年8月2日 13時
