第6話 私の音楽をお届け! ページ38
途中の坂を、息切れしながら走って行く。
目指すのはベートーヴェン先輩のいる、立てこもりの現場だ。
私の後ろを、リストとショパンも付いてくる。
「ちょっとシュー、速すぎて追いつけないわ!」
「けど早くしないとベートーヴェン先輩が!」
どうにかしてベートーヴェン先輩を救い出す。
それだけが私を突き動かしていた。
「……え、ええ……」
「はあ、はあ、どうしたの、チョッちゃん」
「また記事が更新されて……!」
「二人とも早く……なっ!!」
突然、楽譜を模した黒い光が、あたりを包み込んでいく。
私の目の前が暗く閉ざされた。
あわてて振り向くが、時すでに遅し。
二人の姿も、真っ黒な光で覆われ、見えなくなった。
光の中で響き渡る、ティンパニの低音。
これは……交響曲だろうか。
「……ムジーク?」
しかし誰の物なのだろうか。
アレンジの強い、ムジーク独特のポップな音楽が響いていく。
ベートーヴェン先輩の音楽にもよく似ている。
しかし、ロマン派の特徴もいくつか継いでいる。
周りを見る。
真っ黒い光の中、ただ一点だけ、小さな白い光が見えた。
そちらの方に手を伸ばす。
白い光はやがてだんだんと大きくなり、自分の手の大きさを超え、そして全てを包み込んでいく。
その光に魅了されているうちに、ただあたりは白い光のみとなり、やはり何も見えなくなった。
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