第1話 死に損ない ページ4
「ベトー、掃除機かけるからちょっとどいてー」
「……」
「ベトー?」
「……」
「ねえベトった」
「んがぁぁぁぁあああああああ!! 何故だ!! 何故なんだぁぁっ、ぁぁああああ!!!」
春の訪れを感じさせるあたたかい日。
久しぶりのゆったりとした休日を送るため、歌苗は部屋に掃除機を掛けていた。
あとはリビングだけ、という時に限って邪魔が入ったのだ。
どうやらベトは朝起きたときからずっとソファに座って物事を考え続けていたらしい。
今朝朝帰り(※朝五時頃に帰宅)してきたシューベルトがすでにベートーヴェンの姿を目撃していたという話を聞いている。
突然発狂し始めたベートーヴェンを尻目に、これ幸いと急いで掃除機をかけ始めた。
反対では発狂するだけでは飽き足らないのか、今度は床に転がっているが。
「ベトどうしたのよ。そんなに叫んで」
「おお小娘! 今朝から私はずっと考えていたのだ」
「考えてたって何を?」
「何故私がこの世に生を受けたのか!!」
「……いつもと違って、随分壮大なテーマね……」
歌苗が掃除機をかけ終わり、スイッチを切るとベートーヴェン……もとい、ベトはまたソファに腰掛けた。
全ての家事が終わったからいいか、と歌苗も向かい合うように座る。
そのテーマで悩み始めたのは、とあるテレビ番組を見たせいだとベトは語った。
番組、といっても、人間が作った普通のテレビドラマなのだが、普段特に見る物もないからと言ってそれをぼーっと眺めていたらしい。
ドラマの主人公は小学生くらいの男の子。
眠るまでの時間の間、彼は考え事を始めた。
「ぼくはなんでこの世で生きてるんだろう」
……その一言を聞いた瞬間、ベトに電流が流れた。らしい。
そうして昨日の夜からずっとソファでその事ばかり考えていた、という話だった。
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