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ジジジジジジ……。
工事現場のような音が、二階の奥から聞こえてくる。
何が起こっているのだろう、と、スケートボードで走り回っていた僕は覗くことにした。
だって、好奇心には抗えない。
楽しそうなことをしていたら混ぜて貰おう。
聞こえてくるのはとある部屋からだった。
壁紙が剥がれていた汚い部屋のましなところで、ヨハネスが作業をしている。
「なーにしてるの?」
「……なんだ、モツさんか」
「えへへ、なんか楽しそうな雰囲気だったからさ! ……これ何?」
ああこれは、とヨハネスが広げて見せてくれたのは、シンプルな白と茶色の布のようなものだった。
「壁紙だよ。今日の夜勤の帰りに買ってきたんだ」
「へー。これをこの部屋に貼るの?」
「そういうこと。……だけど、ちょっと形がねえ」
「じゃあ切る? 僕も手伝うよ!」
「ありがたいけど……あんまり変な形にしないでね。使えるところがあったら使いたいから」
「ちえー……」
どうせならおっ●いの形に切って貼り付けようかという考えを見抜かれてしまったらしい。
ヨハネスの隣に座り、器用に切っていく様子を眺めていると、次第につまらなくなってきた。
「ねーねー、僕もなんかしたいよー」
「何かって言われてもねえ。これを切ったら、貼り付けるのをやってもらうくらいしかないよ?」
「ええーー!? これただ貼るだけで終わっちゃうのお!? そんなの面白くないじゃん!! もっと面白い形に切ってあちこち貼ろうよお!」
「いや壁紙ってそういうものだよ? あと壁紙でやることじゃないからね?」
ええーーー! と抗議の声を上げている最中も、ヨハネスは作業の手を休めない。
何もすることがない、と文句をいいながら周りでうろちょろしていること10分が経過する。
ふうできた、と言ってヨハネスが立ち上がった。
床に寝っ転がっていた状態から起き上がる。
剥がれかけている壁の一部を隠すように、ヨハネスは切った壁紙を貼り付ける。
元々色あせていたところがあるせいで、少し浮いているが、貼り付けていくうちに壁はだんだんときれいになっていった。
「……これでよし、と」
「えー……ふつうじゃーん……」
「いいんだよ普通で。たまには、非日常から戻ることも大事だ」
「非日常が日常だった方が楽しいよ!」
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