【クラシカロイド】赤いはりねずみ。【男主】 (ページ27)

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コツン、コツン……。

アルケー社社内のとある階の廊下。
部下二人を従え、三弦はバッハの元まで歩いていた。

扉を二回ノックする。
大きく失礼します、と挨拶し、部下共々中に入った。
自分のデスクについたままのバッハは三弦達に気がつくと、ゆっくりと顔を上げる。

緊張からきたのか、少しため息をついてから、三弦は話し始めた。

「例の9人目のクラシカロイドの居場所が特定出来たっす」
「……！」
「しかし……まさか、またあのオンボロ屋敷に潜んでいるとは思わなかったっす。クラシカロイド達はどうしてあそこに吸い込まれていくのか」
「……音羽館か」
「ええ。……どうしますか？」

しばらく沈黙が続く。
照明の少ない室内で、厳粛な空気が流れていく。

「……あ、そういえば。興味深い報告があるっすよ」
「……」
「9人目は、他のクラシカロイドとは違って、真面目にバイトしてるっす」
「……バイト？」
「ええ。まあはっきり言えば、働いてるって事っすね。ベートーヴェンやモーツァルトのような人間性のない奴らとは大違いっす。きっと大バッハ様の元で働いてもいい仕事をし……大バッハ様？」

突然、バッハは立ち上がった。
身につけていたカツラを外し、そっとデスクの上に置く。
ただその姿を見届けていると、バッハは三弦に向かって歩き出した。

「……9人目は、ヨハネス・ブラームスだったな」
「っ！は、はい」

「……私が直接、会いに行く」

「なっ……！？」
「し、しかし大バッハ様……」

「余計なことはしない。君たちは他の業務に当たれ。三弦、今日の夜クラクラのテレビ収録があっただろう」
「えっ……は、はい、午後7時から……」
「……そちらの方に集中しろ。期待している」

大きな手で、三弦の肩をぽんと叩き、バッハは部屋の外へと出て行った。

「……ば……ばっは……さ……ま……？」

「っ！？み、三弦様！？」
「お気を確かに！！」

「大バッハ様に……肩を……か……ああ……」

ドタン、と何かが倒れる音がする。
バッハは一瞬そちらの方を振り返るが、特に気にも止めることなく、また歩き出した。

――音羽館の方へと。

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