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「金を稼ぐ? 必要ない!」
「お金はあった方がいいけどー、僕はそれより楽しい事した方が自分のためになると思うな!」
「ブラームス殿! あなたもまた私と同じ境遇でいるんですね! 分かります分かりますよ! 実にこの世は」
「知らない」
「……あの……本当に、あなた方クズですね……」
「「「どこが?」」」
聞いた私が馬鹿だった。
四人はそもそも働く気が無いという事を忘れていた。
あと一人、唯一家賃を入れているのはリストだけだ。
「働き口ねえ……」
「ええ。出来れば音楽は避けたいんですが……」
「あらどうして?」
鏡の前で自分のメイクをしている最中に入れて貰い、今私は部屋の椅子に座っている。
「他人の前で音楽を弾くのが嫌なんです」
「でもそれを仕事にするのが一番楽な働き方じゃないかしら?」
「……生前からこのような性分だったようで……人に頼まれて弾くのは、億劫というか」
リストはうーん、と軽く眉間にしわを寄せ、困ったような表情を浮かべる。
やっぱりダメだろうか、と諦め、立ち上がろうとしたとき。
「いっそ履歴に書くこと全部偽造したら?」
「えっ……だ、大丈夫でしょうか……」
「だってそれしかないじゃない」
「はあ……」
私も多少は偽ってるし、とウインクされるとさすがに何も言えなかった。
確かに、真実を真っ向からぶつけても誰も信用してくれはしない。
決心した私はリストにお礼を言って、部屋を出た。
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