第3話 順応 ページ18
あれから数日経った。
私は無事に音羽館に住まわせて貰うことになった。
だがしかし、一つだけ問題がある。
それは、歌苗が私に突きつけた一枚の紙と封筒だ。
「もし今後この音羽館に住むのであれば、家賃を入れていただきます」
「……や、ちん……?」
「はい勿論! どこかの自分本位な方々と違って、ヨハネスさんはきちんと払っていただける方だと信じていますから!」
歌苗の言葉の矢はベトとモツ、シューベルトとショパンにまで飛んでいく。
シューベルト以外は気にしない様子でその場を離れていった。
「……そうだね。当然の義務だから入れるようにするよ……ただ……」
「ただ?」
「まだ働ける場所が見つかってないから……入れるのは当分先になると思うんだ。若いのに頑張っている中、申し訳ない……」
「いやあいいんですよー! 入れる意志すらない人だっていますから! 一応毎週末に少しずつ集めているので、払える週にまとめて払うっていうのもありですから」
それでは、とるんるん気分で歌苗は私に紙を渡すと、洗濯を始めてしまった。
就職はおそらく、物理的には難しいだろう。
この世界について何度か調べてみたが、どうやら生まれたときに戸籍登録したり、就職の時に履歴書を送ったりしなければならいらしい。
しかし馬鹿正直に自分の履歴を書いたって信じてくれるはずもない。
実際に一つのバイトに面接をお願いしたところ、履歴書を見てもらった瞬間に突き返された。
今のご時世、昔のような方法でお金を貯めるのも難しい。
さてどうすればいいのだろう。
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