・ ページ16
＿＿＿＿＿＿＿
「……っ、クシュっ！！」
「ん？ どうしたんスか、大バッハ様」
「珍しいねえ、くしゃみなんて」
「どうせ誰かがバッハ様の噂でもしてんだべ」
「そんなこと言ったら大バッハ様は永遠にくしゃみをしていることになるっス」
「うっ……噂って花粉症みてえだ……」
アルケー社。
とある部屋の一室で、四人は食事を取っていた。
夕飯時の午後7時半。
食卓にはフレンチのフルコースが運ばれてくる。
メインディッシュを口に運ぼうとしたとき、なぜかくしゃみが出た。
鼻を啜り、改めて食べようとしたとき。
一瞬だけ三弦の顔が曇っているように見えた。
昨夜、自分の机に報告書のようなものが置かれていた。
その内容はまだ読んでいないが、おそらく置いたのは三弦だろう。
直接会って言えないような事であれば、ここで聞く必要はない。
しかし、何をしていても、彼女は終始ため息をついていた。
仕事にはまだ支障は出ていないようだが、このままではいつか失敗するのではないだろうか。
そんな不安もある。
食べようとしていた肉を皿に置き、バッハは立ち上がった。
「……大バッハ様？ まだ食事が残って……」
「……部屋の資料を読み終えたら呼ぶ」
「っ！」
「……速やかに来るように」
サングラスの奥の瞳は、三弦一人を見ていた。
そのままきびすを返し、バッハはその場を後にする。
残された三人はただ、ぽかんと座っていた。
「……あの、資料って何の……」
バダが三弦に話しかける。
チャイコの方はただぶるぶると体を震わせていた。
三弦は一瞬動きを止める。
小さくため息をつき、持っていたフォークとナイフを丁寧に置くと、三弦は二人に向かって静かに話し始めた。
「……お前達にもちゃんと話さなきゃとは、思ってたっす」
「あぁん？」
「ちょっとチャイコちゃん、いきなり喧嘩腰になっちゃだめだよ」
暗い照明の中、三弦はしばらく黙っていたが、一度息を吸い込むとはっきりとまた言葉を続ける。
「マジで非常事態だったんス。けど、いきなり言って信じてもらえるかは分からなくて……」
「だがら何が非常事態だったんだって聞いてんべ」
「……9人目のクラシカロイドが、知らない間に存在してたんっすよ」
＿＿＿＿＿＿＿＿
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
