私の笑顔をつくる人【HQ×鬼滅の刃】

拾陸 ページ18

「本当にすごく古い……。」


ご飯を食べながら本をめくろうとしたら、紙も相当劣化してて細心の注意が必要。


食べながらなんてお行儀が悪いのは分かってるけど、どうしても気になった。


慎重に、慎重に、表紙をめくる。


中の文字はちゃんと読めた。


「鬼殺隊、名簿……？」


頭がガンガンする。


この先に踏み入れたら何かが変わってしまう、その確信があった。


けれど、この先にあの男の人に繋がる物があると思った。


意を決してページをめくる。





鬼舞辻との戦いで、多くの方が犠牲となるでしょう。
私もいつ命を落とすか分からない。
上の者が下の者の見本になる事は当然。
ここに、我々の生きた証を、戦った痕跡を遺します。

焔 A





「どうして私の名前が……？」


筆で書かれた文章は、私が書いた覚えなどない。


次のページは表紙の通り、何かの名簿だった。





鬼殺隊第97代当主
産屋敷 輝哉

岩柱
悲鳴嶼 行冥

元音柱
宇髄 天元

水柱
冨岡 義勇

風柱
不死川 実弥

蛇柱
伊黒 小芭内

蟲柱
胡蝶 しのぶ

霞柱
時透 無一郎

恋柱
甘露寺 蜜璃





丁寧に綴られた知らないはずの名前。


なのに、全て懐かしい物だった。


彼らに会いたいと思った。


そしてその下の名前を見た時、全てを思い出した。





元炎柱
煉獄 杏寿郎 享年二十歳





名前は水滴で滲んでいて、ちゃんと読めなかったけれど、何と書いてあるかはすぐに分かった。


「杏寿郎様……！」


昨日の夜見かけたのは、懐かしい、愛しい、杏寿郎様の背中。


昼に助けた鴉は、杏寿郎様の鎹鴉。


「これは、鬼舞辻との戦いの前に私が書いた名簿。」


杏寿郎様が猗窩座に殺された後、自分の、周りの命の短さを予感して遺した物。


私の名前も載っていた。





甲
焔 A





結局私も、猗窩座との闘いの中、相討ちのような形になり、17で死んだ。


そう、死んだ。


「生まれ変わったという事……？」


今はもう大正の世ではない。


杏寿郎様が生きている事は確か。


そして、昨日感じたあの気配と叫び声は、鬼。


鬼舞辻を殺せなかった……？


私は戦いの結末を知らない。


状況がどうであるにせよ、今の私では戦えない。


日輪刀もなければ、きっと身体も鈍っている。


「会いたい。杏寿郎様を探さなければ……！」





　令和コソコソ噂話

煉獄さんの名前を書く時、泣きすぎて滲みまくって、十回以上書き直したらしい

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