深紅の物語 (ページ38)

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「気分はどう？」

ウィステリア・レインが、コウ・クルススに声をかける。

コウ・クルススは、自分のひたいに手の甲を当てたまま、いう。

「大丈夫だ。」

ウィステリア・レインは、半ば呆れた顔をした。

「辛いんだったら言った方が、楽になると思うけどな。そんな我慢しなくても…。」

コウ・クルススは、ついハッとする。

「すまない。昔からの癖だ。」

ウィステリア・レインは、クスッと笑う。

「…何かおかしいか。」

「いや、君らしいと思ったんだ。」

その時、シェネキスが大きく振動した。

重い蓋を開けて、内容を確認する。

「なんだって…！」

ついウィステリア・レインは、大声を発する。

「他の魔法使いが、二人やられた。」

「…驚くことではないな。」

ウィステリア・レインは、大きく深呼吸する。

「ミス・マナンティアレに、だ。」

その瞬間、もう一度、シェネキスが震える。

「会いたい…、か。」

ウィステリア・レインが呟く。

「…行く気か。」

「ああ、行く。」

即答だった。

「私が行かなければ、他の人が危うい。」

緊張感が、漂う。

「俺も、行く。」

コウ・クルススは、立ち上がった。

しかし、寝ていても大して効果はなく、逆にさっきよりひどい立ちくらみがした。

それでも、前を向いて耐える。

ウィステリア・レインに気づかれたら止められる。

ーーーーしかし、どうも嫌な予感がしてならない。

「でも、体調が…。」

「大丈夫だから、言っている。」

「君の大丈夫だ、は、あてになったことがない。」

ウィステリア・レインは、顔をしかめる。

「どうせまた、無茶をする。」

「…。」

図星といえば、図星だ。

「私が、信じられないのか。」

真剣な眼差しが、コウ・クルススに当たる。

「信じられる。だが、今回は訳が違う。」

ウィステリア・レインは、困ったように微笑む。

「一度だけでいい。今だけ信じてくれ。必ず戻るよ。」

コウ・クルススは、相変わらずの無表情で、ウィステリア・レインを見つめる。

思わず、ウィステリア・レインはコウ・クルススの黒髪を撫でる。