異変 ページ10
イース・リヴェルタは、帰り道を歩いている。
ゆっくりと歩く足取りは、どこかフラフラしている。
咳を一、二回するとまた歩き始める。
今は、一つ目の山を越えて、下りに入っているというのにその息は荒い。
「風邪でも、拗らせたのかしら…。」
困ったな、と自分に苦笑しながら、歩き始める。
野宿はやはり、体に応えたようだ。
とりあえず、コウ・クルススには、あまり知られたくないので隠そうと心に決める。
まあ、彼は鈍そうだし…。
そう心の中で思いながら、イース・リヴェルタは山小屋に無事、たどり着いた。
「ただいま戻りました」
なるべく元気な声で、威勢良く挨拶した。
空元気である。
しかし、逆に不審に思われたようだ。
「…どうした。」
聞き返されてしまった。
「どうしたって、何がですか？」
イース・リヴェルタはとぼけてみせる。
コウ・クルススは、踏み込んではいけない領域だと察知したのか、そこまで踏み込んでは来なかった。
イース・リヴェルタは、とりあえずコートをかける。
壁に打ち付けた釘は、かなり出っ張っている。
そこにフードの部分をかける。
意外と落ちて来ないものだ。
勝手に感心していると、ふと、胸に違和感を感じた。
何か痛い。
突然、激しく咳き込んだ。
立っていられなくなり、しゃがみこむ。
コウ・クルススは、ただならない状況に気づき、寄ってくる。
「大丈夫か。」
イース・リヴェルタは、ろくに返事もできず、ただ、胸の痛みをこらえながら咳き込むだけで精一杯だった。
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作者名：N x他1人 | 作成日時：2017年3月18日 17時
