episode88 ページ45
世良ちゃんが……死んじゃったかもしれない。
いやきっと……
ドンドンと狂気のようにドアを殴り続けている犯人。
ドアが少しずつ開いていく。
ああ、ここで殺されるのもいいかもしれない。
馬鹿な考えが、頭をよぎる。
だけど世良ちゃんを殺してしまった私に、もう生きる価値なんてないわけで……
そっと目をつむる。
意識がだんだん遠のいていく。
ドアがゆっくり、軋みながら内側に開いていく音がする。
繋ぎとめられた意識の最後の一欠片が、カチャリと軽い金属音を捉えた。
そこで、私の記憶は終わった。
●
「ではAさんが階段から落下した後、君はすぐバルコニーから飛び降りたってことだね?」
真夜中に呼び出された高木刑事は、ただでさえ痩身で頼りない風貌なのに、寝不足でげっそりとして悲惨だった。
ボクはゆっくりとうなずく。
「そうだね。ボクはその時には手のガムテープは解いてたし。
もっとも足は解けてなくて…まずいって焦ってたら、手伝ってくれたんだよなぁ」
「犯人の一人が、ですね?」
もう何度目になるか分からない供述だった。まあ犯人を逮捕する側である警察官にしてみれば、その犯人が人質を助ける手伝いをするなんて、信じがたいことなんだろう。
それはこちらとて同じことである。
あの顔に傷のあるタナベという男は、仲間のミズシマがいなくなった後すぐ、ボクの足に巻かれたガムテープをナイフで切り裂いたのだから。
そして、一瞬ぽかんとしたボクに、ただ一言「行け」と。
結局、ボクが警察官を引き連れて現場に戻ってきたときには、家にいるのはミズシマただ一人で、彼は丁度Aクンが隠れていたリビングのドアを開けようとしていたところだった。
タナベの行方は、未だ分からない。
「それでバルコニーから飛び降りて、近くの交番に駆け込んだってわけ」
話は以上だった。
高木刑事はどういうことなんだと言わんばかりに、盛大なため息をついて、「本日はこれまでにしましょう。
後日また、お話をうかがうと思いますが」と形式的な挨拶を残して帰っていった。
病室は一気に静かになって、ボクと今は麻酔で眠っているAクンが残っている。
そして、壁際にもたれる「すばる」さんとコナンくん。
どちらも無表情で、感情は読み取れない。
ボクとAクンが事件に巻きこまれたと聞いて、二人はすぐに駆けつけてくれた。もっとも彼らがまず最初に心配したのが、ボクだということには違和感がある。
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常夏(プロフ) - コナンの小説でこんなに笑ったの初めてですwww (2021年11月3日 23時) (レス) @page16 id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - はじめまして。すっごく面白いくて一気読みしました!更新楽しみにしてます(^_^) (2019年9月28日 7時) (レス) id: 3d2c2e3b7f (このIDを非表示/違反報告)
糖(プロフ) - あぁあぁあこの展開すきぃいいい! (2019年9月26日 20時) (レス) id: a9cd84d524 (このIDを非表示/違反報告)
名探偵銀ちゃん - 銀魂臭!最高ですネクロマンサー! (2019年9月16日 23時) (レス) id: b151daad25 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - ページ4、rx-7のrxをRX-7にしたほうがいいと思います。なんか、、上から目線で申し訳ないです…… 失礼しました (2018年10月8日 17時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年3月29日 21時