16 ページ17
結局、その後も激しい殴り合いをやめなかった二人は、生徒の知らせをうけて慌てて駆け付けた教官に、入学早々拳骨をくらい、説教部屋と呼ばれる会議室に放り込まれたらしい。
「お前らも、今日は部屋に戻っておとなしくしていろ。体力テストは、お前らだけ後日別に行う」
なんでわたしまで。完全にとばっちりだ。
そう言いかけたわたしだが、「やめておけ」と萩原くんに目で諭されて、仕方なくすごすごと部屋に引き下がった。
一人ぼっちの寮の部屋で、ふと握りしめていたままのハンカチを思い出した。
諸伏くんがくれた、あのハンカチだ。
男の子らしく、無駄な装飾のない紺色のシンプルな布地。
これ、今度返さなくちゃ。そして、ちゃんとお礼も言わなくちゃ。
もう一度。
涙でしめったハンカチをぎゅっと握りしめ、洗濯しようと思い立った。
● ●
体力測定は男子女子、別々に行われる。
女子は講堂、男子は体育館だ。
しかし本来の実施日を逃したわたしたちに、そんな配慮などあろうはずもない。
わたしは松田くん、萩原くん、諸伏くん、零くん、そして昨日都合で入学式に参加できていなかった伊達くんという生徒の中に、ぽつんと一人放り込まれることになった。
男子は黒いジャージ、女子は赤いジャージと決まっているので、否が応でもわたしは目立つ。すでに泣きたい。
「おい、イリゴマ。さっさと並べよ」
頭に包帯を巻いた松田くんが、先頭を指さす。どうやら最初は身長と体重を測るらしい。
なんでわたしが最初なのだと思ったが、仕方なく前に並ぶ。
「えー、背筋伸ばして。はい、顎引いて」
教官がわたしの身長をはかり、同時に体重も記録する。
「はい、次」
わたしは教官から渡された記録用紙に書かれた数字を見て、ため息をつく。まあ大方予想していた数字ではあったが、実際に突き付けられると残酷な気分になる。
もう少し痩せよう……。今度こそ……。
「お、松田、やっぱお前身長高いよなあ」
「大して違わねえだろ、二ミリの差だろうが」
「へえ、二人とも何センチ? あ、萩原、俺と同じじゃん」
「え、そうなの、諸伏? どれどれ、ほんとだ。あ、降谷は? 何センチ?」
「百八十ぴったり」
「じゃあ一番低いな、こんなかで」
「うるさい松田、ぶっ飛ばすぞ」
.
931人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あやちゃん(プロフ) - 海星さん» 面白くて何回も読ませてもらっています!続きがくるのを楽しみにして待ってます! (2020年3月27日 20時) (レス) id: 60d90b2065 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あの、ずっと更新停止されてますが大丈夫ですか? (2020年1月13日 7時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
桜 - そうだったのですか…。安心いたしました!テスト頑張ってください^^ (2019年11月27日 18時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 桜さん» 心配していただいて、ありがとうございます…今テスト中で。更新がゆっくりになってます。すみません! (2019年11月27日 16時) (レス) id: 4bcc115d21 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 最近、更新がありませんが体調など大丈夫でしょうか?とても心配です…… (2019年11月27日 0時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:海星 | 作成日時:2019年11月9日 13時