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トレーを運んできた主は、鳥の巣を頭にのっけたみたいなボサボサの髪の毛の松田くんだった。
「よう、イリゴマ」
「……なにそれ」
「お前のあだ名。ぴったりだろ」
にやにやと意地の悪い笑みを浮かべた松田くんは、二つのトレーを机に乗せて、なぜかわたしの隣に腰かける。
「わたしは駒沢です」
「知ってるよ。あだ名っつってんだろ」
松田くんは割りばしを前歯と手でぱきっと割ると、ずるずるとうどんをすすりだした。
「サンキュー、松田、買ってきてくれて」
「ったく。次はお前がいけよ」
はいはいと威勢のいい返事だけしながら、萩原くんがトレーを引き寄せる。
「Aちゃんもなんか買ってきたら? 美味しそうなのいっぱいあったよ」
「うん、そうする」
萩原くんに言われ席を立ちあがったわたしに、「ダイエットメニューもあったぞ」と茶々を入れてくる松田くん。どうしていつもそんなことばっかり言うのだろう。ほんとうに嫌な奴だ。
「松田くんサイテー」
わたしは低く呟いて、そそくさと二人から離れた。
●
確かにどれもこれも食堂のメニューはおいしそうだ。所詮は警察学校、などと思って馬鹿にしていたが、そうでもないかもしれない。
わたしは一番安いそうどんにしようか、それとも二番目に安い空揚げ定食にしようか少し迷った。
普段のごはんは支給制だが、今日のように特別な日にはこうしてお金を払えばいろいろ食べさせてくれるのである。
結局わたしは空揚げ定食にすることに決めた。そうどんだけだと、午後からの体力測定がもたないだろう。
列に並んでいたら、「おい、邪魔」と頭上から野太い声が降って来た。
はっとして顔を上げると、大柄な男がわたしを睨んでいる。早くも新入生の間でのリーダーポジションを勝ち取ったのか、周囲にお供のように数人の生徒を侍らせていた。
「どけよブス、邪魔なんだよ」
「……すみません」
顔をそらし、わたしは一歩後ろにさがった。
チッと舌打ちが聞こえ、どん、と肩があたる。わざとじゃないかと思うくらい強く当たられて、思わず数歩背後によろけた。とっさに男を睨みつけてしまい、しまったと思う。
男はまじまじとわたしの顔を見て、にやあっと下卑た笑いを浮かべた。
「お前、駒沢?」
「……」
「やっぱそうだろ? はは、すげえ傷。ゾンビみてえ」
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あやちゃん(プロフ) - 海星さん» 面白くて何回も読ませてもらっています!続きがくるのを楽しみにして待ってます! (2020年3月27日 20時) (レス) id: 60d90b2065 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あの、ずっと更新停止されてますが大丈夫ですか? (2020年1月13日 7時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
桜 - そうだったのですか…。安心いたしました!テスト頑張ってください^^ (2019年11月27日 18時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 桜さん» 心配していただいて、ありがとうございます…今テスト中で。更新がゆっくりになってます。すみません! (2019年11月27日 16時) (レス) id: 4bcc115d21 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 最近、更新がありませんが体調など大丈夫でしょうか?とても心配です…… (2019年11月27日 0時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2019年11月9日 13時