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警察学校では、クラスのことを俗に教場とよぶ。鬼塚教場はその名の通り、鬼塚教官が受け持つ教室ということである。
簡単なオリエンテーションが終わって、身体測定までの間が昼食のための休憩だった。
全寮制の警察学校では、当然三食支給制の学食である。
わたしのほうを気遣うように見る諸伏くんに、いちおう「それじゃあ」と声だけかけて、わたしは教室を出た。零くんには睨みつけられたが、気が付いていないフリをする。
食堂は新入生たちで溢れかえっていた。
警察学校は初等科と呼ばれる、いわゆるわたしたちのような「新入生」のほかにも、一度警官になってからもう一度研修のために戻ってくる先輩たち、そして専門技術に特化して学びに来ているベテラン警官たちの三つに分けられる。
学舎が違うので、出会うことはほとんどなく、食堂にたむろしているのもすべて初等科の生徒たちだ。
このメンバーで、高卒者はおよそ十か月、大卒者はおよそ六か月、警察官としての訓練を積む。
わたしは高卒組なので、十か月のコースだ。
わたしはできるだけ目立たない隅の席に腰かけた。がやがやと騒がしい空気に包まれた食堂を見渡し、何を食べようかなと考えていると、ポケットの中の携帯が震えた。
取り出して通知を確認すると、萩原くんからメールだった。
【今どこにいる?】
……めんどうくさいなあ。無視しようかな。
返事せずに放置していたら、今度は携帯が鳴りだした。
「……はい、駒沢です」
「なんで無視すんの? ひでえよー」
へらへらした萩原くんの声が聞こえてくる。
「ごめん、気づかなかった」
誤魔化そうと思ってそう言ったら、くすりと笑われる。
「うそつき」
「ひゃあっ」
耳元で低く囁かれて飛び上がった。ぞくぞくと体感したことのない、なんだかよくわからない感覚が、背筋を這い上がってくる。
にっこりとほほ笑む萩原くんが、すぐ横で携帯を耳にあてながら、わたしを見つめていた。
「は、はぎわらくん……いつからいたの?」
「ずっといたけど? Aちゃんが俺のメール開いたときから」
「最初からじゃん」
萩原くんを横目で睨んでいたら、どん、と机の前にトレーが置かれた。カレーうどんとサラダの定食だ。
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あやちゃん(プロフ) - 海星さん» 面白くて何回も読ませてもらっています!続きがくるのを楽しみにして待ってます! (2020年3月27日 20時) (レス) id: 60d90b2065 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - あの、ずっと更新停止されてますが大丈夫ですか? (2020年1月13日 7時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
桜 - そうだったのですか…。安心いたしました!テスト頑張ってください^^ (2019年11月27日 18時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 桜さん» 心配していただいて、ありがとうございます…今テスト中で。更新がゆっくりになってます。すみません! (2019年11月27日 16時) (レス) id: 4bcc115d21 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 最近、更新がありませんが体調など大丈夫でしょうか?とても心配です…… (2019年11月27日 0時) (レス) id: 73a2611a5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2019年11月9日 13時